ポルトガルを訪れたなら、ぜひ行ってほしい美術館があります。そこは首都リスボンにある「グルベンキアン美術館」。
石油王として名高いカルースト・グルベンキアンが個人で集めた世界中の秘蔵コレクションが眠っています。
あまり知られていませんが、ここでしか観られない印象派作品や日本の浮世絵、さらには古代エジプトや中国の美術品まで幅広く鑑賞できます。
ポルトガル旅行へ行った人はもちろん、世界の美術館へ旅したい人に向けて見どころを解説します。

アートが好きで印象派やモダニズムに関する本は30冊以上読破。月2回は国内外問わず美術館・展示会に行く。
グルベンキアン美術館とは?
「グルベンキアン美術館」は1969年に石油王であり、美術収集家のカルースト・グルベンキアンによって建てられた美術館です。
緑豊かな庭園の中にあり、モダニズム建築としても有名です。

グルベンキアン美術館の見どころ
美術品はグルベンキアン氏自らが収集したコレクションからなっており、古代エジプトから東アジア、イスラム、ルネサンス、西洋近代美術までと幅広く、”時間”と”地理”を飛び越えた収蔵構成です。
収蔵量は世界的な美術館と比較して少ないこともあり、まず日本に来ることがないため、ここでしか観られない作品ばかりです。
また、あまり混雑するような美術館ではないため、静かに自分のペースでゆっくりと鑑賞できる点も魅力。所有時間は1時間もあれば十分回れます。
個人的には絵画作品が好きなのでまずはそちらを中心に有名な作品を紹介させてください。(この美術館で特に人気なのも絵画作品です)
グルベンキアン美術館の有名作品
数は少ないですが、世界中で人気な印象派作品も観られます。特に有名なマネやルノワール、モネ、ドガなどの作品が展示されているので、それだけで行く価値が大いにありです。
※以下画像をタップすると拡大できます
「ソファに座るモネ夫人」- ルノワール(1874年)

日本でもモネと並び人気の高い印象派の巨匠・ルノワールの作品。家族ぐるみで仲の良かったモネの奥さんカミーユを描いています。
ルノワールといえば、華やかな色彩と細やかな筆触が魅力の画家。この作品も背景には大きくソファの白、周りには細かく緑や赤の色が交わることで主題のブルーが美しく映えるようになっています。
美術館に入ってすぐにこの絵の存在感に気づくと思います。サイズはそれほど大きくありませんが、それほどに輝く存在感を放っています。
ルノワールの生涯や代表作を知りたい方は以下記事をご覧ください。
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「シャボン玉をする少年」- マネ(1867年)

”印象派の始まり”を作ったと言われるマネの作品。マネ自身は「私は印象派ではない!」と考えている人で、事実、古典的な絵画や技法が好きな人でした。
この絵もマネがリスペクトしているスペイン画家のベラスケスなどの時代に見られる「キアロスクーロ(明暗法)」が用いられていて、印象派のような華やかな色味ではなく、パキッとした背景と主題にスポットが当たる構成が特徴です。
ただ写実主義ほどの書き込みはなく多少筆のタッチを残しているのは印象派らしい、なんともマネっぽい作品です。ちなみにシャボン玉は”儚さ”を表すシンボルのため、もしかしたらマネは愛らしい子供に、瞬間の儚さを添えて、「若さの一瞬」を表現したのかもしれません(普通に「子供かわいい〜」くらいの感情だったのかもしれない)。
「パレス・アテネ」- レンブラント(1657年)

日本でもその名前を知られる「光と影の魔術師」ことレンブラント。オランダ出身の画家としては、ゴッホ、フェルメールと並ぶ3大巨匠の一角です。
個人的には、グルベンキアン美術館で最もおすすめの作品です。惹き込まれすぎて、一周した後にもう一度戻ってきてしまいました。
レンブラントは神話や宗教的な場面を日常生活に溶け込ませるのが得意な画家として有名で、この作品もギリシャ神話の女神アテネを描いていますが、「神」のような演出はなく、まるで「人間」のようです。この性別不明なな顔立ちやなんとも言えないアンニュイな表情が私は好きでした。何より光と影のバランスが素晴らしすぎる。まさに神業。
ちなみにレンブラントの出身地はアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」に出てくるオランダの都市ライデンです。
「解氷」- モネ(1878年)

日本で圧倒的な人気を誇るクロード・モネ。見慣れると、彼の作品は名前を確認しなくとも分かってしまいます。
それくらいに分かりやすい「The印象派」と呼べる彼の筆触。パレット上では色を混ぜない筆触分割という技法を用いながら、あえて筆のタッチを残すように色をサッと塗り重ねています。
その結果、より鮮やかに、そしてその光景の印象だけが残るかのような作品に仕上がっています。しかしこの絵はかなり暗いです。なぜなら彼の最愛の妻であるカミーユが亡くなった翌年の絵だからです。
モネの絵は溢れんばかりの光を吸収したような作品が人気ですが、実はカミーユ没後は一時的に心の沈んだ状態が作品へ反映されました。そのように内面の反映がされやすい画家がクロード・モネです。


「アンリ・ミッシェル・レヴィの肖像」- ドガ(1878年)

印象派の中でも性格が尖った人物として、友達の少なかったドガ。彼の絵の多くはバレエを踊る、踊り子たちをモチーフにしています。印象派といえば、別名”外光派”とも呼ばれるほど外の光を取り入れた画家が多い中、ドガはほとんど室内で絵を描いていました。
目の病を患っていたとことも理由にありますが、バレエの絵がよく売れたこと、またそもそも彼の描きたいものが人間の肉体や動きにあったのではないかとも思います(バレエ大好きでオペラ座の定期会員でもあったようです)。
その前提を考えると、「バレエの絵ではない×友人画家の肖像」という超貴重な作品です。さらにドガ自身が一緒に描かれているのは非常に珍しく、少なくともこの時はかなり仲が良かった友人だったのでしょう(もしくはドガが好意を寄せていた)。
ちなみに彼の有名な肖像画もありました。

「フェート・ガラント」- ランクレ(1725年)

これぞThe ロココ調な「優美・繊細・荘厳」が全面に出た作品で、美術館にある絵画の中ではおそらく最も細かく繊細に描き込まれた作品です。
これすごいのが、あまり大きな絵ではないのに拡大して見ると、こんなに細かく人物たちが表現されていることです。どんな筆でどれだけの時間かけたらこんな作品が出来あがあるのか…。

ちなみに絵のタイトルにもなっている「フェート・ガラント」とは、ロココ調ではよく好まれた主題で、上流階級の男女が優雅に戯れる情景を描いた雅宴画のことです。要はパリピな金持ちたちのパーティーですね。
「ミノタウルス号の難破」- ターナー(1725年)

私が訪れた際は、残念ながら鑑賞できなかったため画像で失礼します。こちらは印象派の先駆け的存在であったイギリスの超人気画家ウィリアム・ターナーの代表作の1つ。
ちなみに「ミノタウルス号」はナポレオン軍に勝利を果たした船ですが、イギリスへ帰ってくる途中に沈没してしまい、その様子を描いたと言われる作品です。
印象派といえば、フランスの画家たちですが、実はターナーはモネたちが台頭する前にすでにイギリスで印象派のように光と色彩を巧みに操った作品を多く出していました。
例えば、以下の作品など何も言われなければ印象派の作品と思ってしまいます。


グルベンキアン美術館のお土産グッズ
お土産コーナーは広く、ポストカードはもちろん、お皿や雑貨、服などのグッズが置いてありました。

洋画以外に人気なのが浮世絵のようで、グッズも多く置いてあります。実際、美術館ですれ違った欧米の方が日本の浮世絵作品を見て「Oh My Gosh」と呟いて友人を呼び込んでいたので人気なのでしょう。

大体ポストカードが1.5~2ユーロほどでした。またポルトガルは石鹸も人気なようで、かなりの種類が売っていました。でも約7ユーロは高すぎる…

グルベンキアン美術館についてのFAQ

- グルベンキアン美術館へのアクセスは?
 - 
電車が最も移動しやすいでしょう。最寄駅は街の中心部からも遠くはないSão Sebastião駅で、駅からは徒歩5分ほどです。
 - グルベンキアン美術館で見るべき最も有名な作品は?
 - 
最も人気の作品は印象派・ルノワールの「ソファに座るモネ夫人」です。
 
- 入場料はいくら?
 - 
2025年現在は8ユーロです。
 
リスボンに行くなら訪れたい美術館

正直、グルベンキアン美術館は有名な美術館ではありません。リスボンの観光スポットランキングでは上位になることもありません。
ただリスボンは坂道が多く、日差しも非常に強いので、どこかで一息つきたくなる瞬間もあるはず。
そんな時に涼しい空間で、美術館独特の歴史とロマンの香りに包まれてみてはいかがでしょうか。
よきポルトガル旅行を。



