オランダのアムステルダムにある「ゴッホ美術館(Van Gogh Museum)」。
世界で最も多くゴッホの作品を扱う美術館であり、有名な『ひまわり』など、ここでしか見られない作品が多数あります。ゴッホをあまり知らなくても大丈夫です。この記事ではゴッホ美術館にある有名な作品についてエピソードも含め解説します
「ゴッホ美術館に初めて行く人」「これから行ってみたいと思っている人」がより楽しめるよう、訪れた写真などと共に見どころを凝縮してみました。
ゴッホ美術館ってどんなとこ?
世界で最も有名な画家の1人「フィンセント・ファン・ゴッホ」の作品を中心に展示する美術館。年間100万人以上が訪れるオランダでも随所の観光名所。
住所 | Museumplein 6 1071 DJ Amsterdam |
営業時間 | 午前9時~午後5時(毎週終わりの時間が1時間ほど前後するため最新情報は公式サイトをチェック) |
所有時間 | 平均1時半(2〜3時間あれば満喫できる) |
チケット料金 | 22ユーロ(18歳未満は無料) |
日本語の音声ガイド | アリ(3.75ユーロ) |
写真撮影 | OK(フラッシュNG) |
チケット購入場所 | 公式サイトからの事前予約 |
ゴッホ美術館の見どころは?
1.触れていい?くらいの至近距離で鑑賞できる
ゴッホ美術館では、現在は門外不出となり、ここでしか見られな6枚目の『ひまわり』(現存するものは世界に6枚)や『花咲くアーモンドの枝』など有名な作品が多数展示されています。
しかも太っ腹なことに、ほとんどの作品が分厚いガラスケースなし。絵に触れられるくらいの至近距離で鑑賞できるので、ゴッホの大胆な色彩や厚塗りの質感を間近で感じられます。(撮影OK)
ゴッホの絵の真骨頂を生で体験させてくれるゴッホ美術館、素晴らしいです。(例の活動家がペンキぶっかけないか心配にもなった…)
2.ゴッホに影響を与えた先輩・同期の作品群も見られる
展示作品はゴッホの作品以外もあります。ゴッホに大きな影響を与えた歌川広重の浮世絵や先輩となる印象派クロード・モネ、一時は”黄色の家”で共に生活をしていたポールゴーギャンなどの作品も一部展示されてます。より奥行きをもってゴッホの作品性を理解できる仕組みになっています。
特に浮世絵については、実際の絵とゴッホが真似て描いた浮世絵の絵を見比べることができて最高です。
ポスト印象派の代表3人といえば、ゴッホ・セザンヌ・ゴーギャンですが、その中でも圧倒的に日本の浮世絵の影響を受けているゴッホ。話には聞いていましたが、他の絵にも随所に浮世絵的タッチが垣間見えて、勝手に誇らしく感じます。
3.狂気の天才と呼ばれたゴッホの生涯を深く知ることができる
この美術館の魅力は作品だけではありません。ゴッホは37歳で自殺(他殺説もあり)するまで壮絶な人生を歩んでいます。
彼ほどドラマチックな人生を過ごした画家もそうはいません。ゴッホ美術館では、彼の人生年表や絵の変革期の説明が丁寧にされています。
そして最大の支援者である弟のテオ無くして画家ゴッホは存在していません(テオの奥さんヨーも同様に)。この二人の関係性や本物の手紙のやりとりが美術館では見ることができます。
画家ゴッホが「どのように生まれ、どのように死に、どのように有名になったのか」を知ることで、より深くゴッホを知ることができるのが、実は最大の魅力かもしれません。
ゴッホ美術館で絶対見ておきたい作品
ゴッホ美術館には、ゴッホの作品が約760点も所蔵されていますが、その中でも個人的に絶体見ておくべき!という至極の作品を5つ紹介します。5つ絞るのに30分かかりました。
少し長くなるので、先にお土産グッズをチェックしたい人は記事のコチラへ。
1.『ジャガイモを食べる人々』
制作年は1885年。パリに移住前のゴッホ初期作品であり、ゴッホ自身としては1887年に妹に宛てた手紙で、自分の中で最も優れた作品であると残している。Theゴッホと言える、激しい色彩とは正反対の時期で、「暗黒の時代」と称される時期。暗いタッチで、モチーフも貧しい農民の食卓の様子。これは彼の伝道師としてのバックボーンがある。画家になる前、伝道師見習いとして貧困にあえぐ人々と同じ環境に身を投じており、その時の空気間までも表現されている。また賞賛していた画家シャルル・ド・グルーの描いた『夕食前の祝福』から着想を得たとも言われている。
実際の目で見ると、個人的にはこの絵が最も印象的でした。この当時はまだ印象派の絵が完全に認められている時代ではないため、基本的には神話や宗教に基づくテーマがほとんどであり、本物に近い写実的な絵がデフォルトでした。
その中でこのテーマを描くこと自体がどれだけ逸脱していたかは言うまでもありません。デフォルメされた人物とは対称に、非常に現実的な風景が描かれているのが興味深いです。それなのにこの農民の姿を見ていたのは、ゴッホが宗教に傾倒していたからという背景がまた面白いです。
2.『花咲くアーモンドの木の枝』
制作年は1890年。ゴッホが亡くなる半年前に描かれた作品。この絵は、ゴッホ最大の支援者・理解者である弟のテオに子供が生まれたことを祝福するために描いたという有名なエピソードがある。そして甥の名は、テオが兄ゴッホから取り、「フィンセント」と名付けられた。ただこの絵を描いた時期のゴッホは祝福とは真逆の状況。精神病院への入退院を繰り返していた。テオに子供が生まれたことで、支援が減る不安、自分が弟の負担になることをより実感し、罪悪感にも苛まれていた。ゴッホの心情はかなり複雑であったと推測される。
ゴッホは不安や病気を抱えながらも、弟テオに子供が生まれたことに喜びや祝福の言葉を送っています。実際テオの家を訪れたゴッホは甥っ子をいたく可愛がっていたそうです。
事実、この時代のゴッホの絵は力強さやおどろおどろしい雰囲気のものが多いですが、この絵には、可憐さや生命・神秘さを感じました。特にハッとするほど美しいターコイズブルーの背景からは優しさがふわっと滲んでいるように感じました。
フランスでのアーモンドの花言葉は、「永遠の優しさ」。甥っ子に向けてか、弟に向けてか、弟が自分に向け続けてくれた優しさ、一体誰から誰に向けてなのでしょうか。
なお、近くでじっくり見ると、ゴッホの厚塗り加減や木の枝が浮世絵を彷彿とさせるタッチなどが感じられます。
3.『ひまわり』
制作年は1889年。ゴッホの代名詞とも言える『ひまわり』は、全部で7作の連作だが、1枚は第二次世界大戦で消失してしまい、現存するものは世界で6枚のみ。元々『ひまわり』は一緒にフランスのアルルで共同生活を送ってくれる先輩画家ゴーギャンのために、より気持ちが晴れやかになるインテリアとして作成されたのが始まり。ただし、この6枚目は皮肉にもゴーギャンがゴッホとの生活に耐えられず家を出た後の作品。有名なゴッホの「耳切事件」は、ゴーギャンが”黄色の家”を出て行ってしまったことが最大の発端と言われているほどで、ゴッホの精神ダメージが特に大きかった事件である。
基本の軸が黄色ベースばかりで塗られているのにも関わらず、絵の具の厚み具合で遠近感を出す、このゴッホらしいタッチを生で見られるのはたまりません。ひまわりの渋い匂いが充満しているような存在感がありました。
ひまわりは信仰心と愛の象徴であり、太陽にずっと顔を向け続けていると考えられています。元々は好きなゴーギャンのために描いた絵ですが、ゴッホの元を去った後にも描いているのがなんとも切ない…。
ちなみに生で見て初めて気づいたのが、ゴッホのサインがちょっと雑に鉢植えの部分に描いてあること。本人は世界的画家のつもりもなかったからでしょうか。「そこにそんな感じでいいの?」と、実物を見たかこそ思っちゃいました。
4.『灰色のフェルト帽の自画像』
制作年は1887年。多くの自画像を残したゴッホだが、この絵がそれまでの絵と大きく変わり、点描画での実験を試みた時期であった。ただクロード・モネのような点描画とは異なり、太い線と短い線を小刻みに入れた線描画である。背景だけでなく、服や顔、目の中までも統一的に同じ線で描かれている非常に特徴的な絵だが、この線の特徴が後の『ひまわり』にも繋がっていくゴッホの重要な特徴となる。
ゴッホの自画像は数が多く、また絵のタッチが異なるものも多いです。ゴッホ美術館においても自画像だけのコーナーがあり、年代によって表情だけでなく、描き方が違いすぎて同じ画家とは思えません。ゴッホはお金がなかったこともあり、他人をデッサンにできる余裕はなく、自分を描くことで絵の練習や新たな技法を編み出す実験をしていた言われます。
また同時にゴッホは絵の速さにこだわっていて、速書きで有名でした。より早く絵を仕上げるためにも、このような独自性のあるスタイルを確立したのかもしれません。
5.『カラスのいる麦畑』
制作年は1890年。ゴッホ晩年の作品であり、この絵を描いた7月にゴッホは亡くなってる。その事実やこの時期のゴッホの精神的な不安定さ、小麦刈りが聖書では死を象徴していることなどから、悲しみや人生の終焉を迎えつつある寂寥感を表していると言う批評家が多い。先が見えなくなっている別れた道、強い風が吹き、大きく揺れる小麦畑、不安を煽るようなカラスの群や暗い空。絵全体から感じる雰囲気からは孤独感が漂う。
絵を実際に見た感想として、真っ先に感じたのは確かに”強い孤独感”でした。と同時に完全な絶望ではなく、「この先がどうなっていくのだろう」という”未来への不安のようなもの”が、最後にこぼれてきた私の感想でした。
この絵は完全に最後の遺作ではなく、後に数枚の絵を描いていて、それらは『小麦の山のある畑』など明るめのタッチです。またそもそも自殺説も確実ではないことから、ゴッホが亡くなったことと完全にリンクするわけではありません。
孤独や精神的状況に左右されつつも、自然崇拝をするゴッホが見た月夜の小麦畑であっただけなのかもしれません。
ゴッホの描く絵は独創的で、惹かれはしても正しく共感するのが難しいです。そのため多くの作品で、ああでもないこうでもないと見た人たちが議論します。この正解のなさすら魅力なんだろうと、この絵を見て納得しました。
ゴッホ美術館で見られrない有名な作品は?
特に有名ながらもゴッホ美術館で見られない作品は以下です。
『星月夜』
展示されているのは、アメリカ・NYにある「MoMA」です。
『夜のカフェテラス』
展示されているのは、オランダの「クレラー=ミュラー美術館」です。
『タンギー爺さん』
展示されているのは、パリの「ロダン美術館」です。
『医師ガシェの肖像』
展示されているのは、パリの「オルセー美術館」です。この絵は2枚存在しており、1枚は日本人により当時の史上最高額として落札されましたが、現在はそちらは行方不明となっています。
ゴッホ美術館のお土産グッズを紹介
ゴッホ美術館のお土産グッズはかなり充実しています。入場する前の入り口付近と入った後にもおみやげんスペースがあり、ゴッホ関連のグッズは非常に充実しています。
ポストカードやカレンダーはもちろん、小物もたくさん。オランダの有名キャラ「ミッフィー」とのコラボぬいぐるみも。
個人的には以下のゴッホぬいぐるみが一番刺さりましたが、半年くらい後に見たら「このおじさんぬいぐるみ誰だ?」となりそうなので止めました。
私は本が好きなので、この栞も購入。
ちなみにゴッホ美術館を出るときは、こんな満足度評価を表すボタンがありました。迷わず一番左を押しました。
【余談】ゴッホ美術館の緑の敷地で本を読むのが最高
ゴッホ美術館の中ではないのため、見どころに書きませんでしたが、個人的にめちゃめちゃ良かったのが、この美術館の緑の敷地。
若者から高齢の人まで多くの人が、談笑したり本を読んだり、お酒を片手に語らっていたりと、すごく良い雰囲気。
私もゴロンと寝転び、風を気持ちよく感じながら本を読みました。「ここで読むならこの本っきゃないでしょ」と、原田マハさんの『たゆたえども沈まず』を持ってきました。
ゴッホの人生も知りつつ、作品鑑賞するとかなり体力を消耗するので、ここでコーヒーでも飲みつつ一休みするのが最高におすすめです。
【裏技】当日チケットが無くても買えるかも?
時期にもよりますが、基本的にゴッホ美術館は事前のオンライン予約が必須です。私の友達は当日でなんとかなると思って、見たら5日先までチケットがソールドアウトしていて、ショックを受けていました。
ただ、当日券がなくともゴッホ美術館に入れる可能性があります。それは少々高くつきますが、ガイドツアーを申し込む方法です。
例えば、こちらのオランダツアーサイトなど。
少なくとも50ユーロ以上はするため、負担が増えますが、ツアーでは元から多くのチケットを購入してあるため、公式サイトで当日券を購入できなくとも参加できます。ただ私の友達は英語が苦手で、唯一わかった言葉は「Go Next!」だったみたいです。
せっかくアムステルダムまで来たなら、多少高くとも行っておくのがおすすめです!(ギリギリのキャンセルもあるので、それを狙うのもあり)
ゴッホ美術館への行き方
ゴッホ美術館は、アムステルダム中央駅から歩いて行っても40分なので、街の散策がてら行くのもおすすめです。道順もシンプルで中央駅からまっーすぐ進むだけ。
ただ、基本はトラムで行くのが早くて楽でしょう。アムステルダム中央駅から出ている、トラム2番、5番、12番線のいずれかで行けます。最寄りの停留所は「Van Baerlestraat」または「Museumplein」。トラムに揺られ、15分程度で着きます。
なお、トラムは目的地までのチケットではなく、時間制なので1日チケットを購入するのがお得です。大体3ユーロほどです。
ゴッホ美術館についてのFAQ
- ゴッホ美術館の見て回る所有時間は?
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平均時間は1時間半。2〜3時間あると満喫できます。
- ゴッホ美術館の開館~閉館時間は?
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午前9時~午後5時(毎週終わりの時間が1時間ほど前後するため最新情報は公式サイトをチェック)
- ゴッホ美術館はどこにある?
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オランダのアムステルダムにあります。
- 日本でゴッホの絵は見られる?
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現存する『ひまわり』6枚の内の1枚が新宿にあるSOMPO美術館で見られます。
- 受付で荷物は預かってもらえる?
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はい、無料のロッカーで預けられます。リュックくらいのサイズまで入れられます。
- ゴッホ美術館以外でゴッホのコレクションはどこにある?
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ゴッホ美術館以外にもオランダのクレラー=ミュラー美術館が多くのゴッホ作品を扱っていて、有名な「夜のカフェテラス」も展示されています。
ゴッホ美術館の総合評価・レビュー
★★★★★:人生が豊かになった。行ってみるべし
★★★★☆:行ってよかった。おすすめしたい。
★★★☆☆:まあまあよかった。おすすめするかは微妙。
★★☆☆☆:好みじゃなかった。
★☆☆☆☆:行かなくてよかったかも。
オランダに行く機会はなかなかないかもしれませんが、ゴッホの作品をこれだけ堪能できる美術館は世界にここしかありません。またオランダはヨーロッパの中で治安が良く、気候も過ごしやすい素敵な国です。
もし、人生でのオランダ寄り道ができる日が来た時には、ぜひ立ち寄ってみてください。