「九龍ジェネリックロマンス」、それは香港の九龍(クーロン)城砦というディストピアで深まるミストリーとロマンスの物語。
多くの伏線が張られたこの漫画は、現在10巻まで発売されており、完結していません。本記事では漫画の最新刊に合わせ、ネタバレ考察を更新します。
「鯨井の正体とは」「九龍は誰によってどのように作られているのか?」「鯨井令子が自殺した理由は?」など、謎はまだまだあるので、楽しんで最終回も予想していきます。
あらすじやキャラから知りたい方は、以下で漫画の魅力を存分に語っているので、ぜひ読んでみてください。なお、本記事の考察はあくまで予想ですので、寛大な気持ちで読んでいただけると幸いです。
九龍は誰がどのように作っている?
現在明確にはなっていませんが、九龍(クーロン)は「工藤の意識」×「ジェネリックテラ(地球)」により作られているのではないかと考察しています。
理由としては以下です。
※以下では「リアル」を「R」、「ジェネリック」を「G」と表現することがあります
工藤の記憶・意識・イメージが反映している
これは漫画内で結構取り上げられている点です。
九龍は完全に以前と同じではなく、一部道が塞がっていたり、前にあった場所に行けなくなります。これは工藤が完全に九龍の地図を記憶しているわけではないため。
また九龍では何故か昔ながらのお店は残っていて、新しいお店ができても潰れてしまいます。鯨井がそのことをボヤいていましたが、工藤は昔ながらのお店にこだわっていて、新しいお店をむしろ毛嫌いしていました。「クーロンはなつかしい場所であるべき」とも言っています。ここにも彼の意識が反映されているように見えます。
決定的なのは、9巻の終わりで工藤が知らない九龍の情報をグエンが伝えたところ、それが九龍に存在するようになったこと。これは工藤が意識したり、イメージしたことが九龍に反映されている証拠ととれます。
また最終回の考察パートで記載しますが、G鯨井が探していた「踊り場の事件簿(下巻)」の文字化けや6巻で九龍の一部が崩れたことなどもここが原因だと考えています。
ユウロンによる九龍出現の考察
人類の新天地として建設されている「ジェネリックテラ(地球)」。(※以下「ジャネテラ」)特大級の強い”気”が流れる九龍の気脈をジェネテラが乱し、”人の強い後悔の念”によってジェネリック九龍が生み出されたというのが、ユウロンの考察です。
部外者でも、同じく”後悔”を持つ人間にだけは共鳴して、九龍が見えていました。
1巻からずっと、空に浮かぶジェネテラは要所要所で映っているので、相当重要な何かであることは間違いがなく、このジェネテラが工藤の意識に強く反映して、九龍を作り出しているのでは?と考えられます。
九龍中にあるお札は何を意味している?
九龍の一部の地域にはタオのマークが入ったお札がそこら中に貼られています。
お札の裏は、白紙のものもあれば、「202 Accepted(受領完了)」や「403 Forbidden(閲覧禁止)」などWebブラウザ上のエラーコードが記載されたりしています。
考察するに、これはジェネテラがジェネリック九龍を作る上での処理状況を表しているのかと思います。工藤が意識したりイメージするものに対し、絶えず生成や維持などの処理をする必要があり、その状況なのではないでしょうか。
またそれだけではなく、ジェネテラはある一定の意思を持っている可能性があります。それはG鯨井がお札を集め、何を意味しているかを解明しようとしていた際に「Don`t look for it anymore(もう探るな)」という命令的な文章が書かれていたためです。その後にお札を集めているのを知った工藤が、G鯨井に対して「もう探るな」と同じことを言いますが、順番的に工藤の意思が反映されたわけではないことがわかrます。
なお、お札はR九龍が無くなる前、蛇沼グループが九作っていた麻薬効果のある風邪薬「メビウス」をもらうための鍵でした。R鯨井はその薬の過剰摂取によって亡くなってしまったため、工藤はみゆきなど蛇沼グループに関わる一切を憎んでいます。
「鯨井令子」の正体は?
結論、現在存在している鯨井令子の正確な存在は明らかになっていません。判明しているのは、他の九龍の住人同様に、”九龍を見える人”にしか鯨井令子のことは見えないということです。
また蛇沼みゆきが「ジルコニアン」でも「クローン」でもない「ジェネリック(後発的な)」な存在と明言しています。
では、他の九龍の住人と完全に同じかというと、状況が特殊で、R(リアル)の方がすでに亡くなっています。そのため、Rが九龍に入って消えるということは起きません。さらにR鯨井と全く性格が異なるという点も特殊ケース。
そもそも本当に彼女は九龍の中でしか生きられないのか、決定的なことは未だにわからないため、主人公である彼女の正体こそ、本作最大の謎と言っていいでしょう。
少なくとも、実は実在する人間ということはないはずで、ジェネテラによって生み出されていると思います。工藤が最も意識していた人間だから特別なのか….
などと答えのないことを考えていますが、私がこの漫画が好きなのは、ニセモノかどうかは関係なく、自分を信じて「自分は自分」と胸をはって言える”絶対の自分”になるというテーマです。
もう少し話が進まないと、鯨井の正体は不明ですが、何にせよこのズレないアイデンティティという漫画の軸が素敵です。
鯨井令子が自殺した理由は?
直接的な死因は、蛇沼グループの作っていた風邪薬の過剰摂取です。漫画では何度か自分の人生を諦めていたり、これからも生きるべきかを運に託したりしている様子がありました。
10巻では、工藤のプロポーズを受け、最後の人生運試しとして、薬を飲み、結果亡くなってしまいました。
直接的な理由は、過去の出来事でしょうが、若くして亡くなってしまった母親などが関係している可能性がありそうです。
「私、下巻を読まない女なの。」と言っていましたが、結果的に人生の下巻には入らず幕を閉じてしまいました。G鯨井がR鯨井と違うところは、自分が読みたいと決めたから、下巻を何とか探して読む!というスタンスですね。
【最終回予想】九龍ジェネリックロマンス
記事のコチラで、ジェネリック九龍は工藤の大きな後悔と過去への執着がきっかけに、ジェネリックテラが創り出したのではないかと考察しました。この工藤の感情がヒントかもしれません。
1話目でも出てくる、「なつかしい」という感情が重要そうです。「なつかしい」という感情は、”心に閉じ込めたい”ということでは? それはつまり”恋”しているのと同じという話が出てきます。
逆に、揚明は自分へのネガティブな気持ちで変わりたいという気持ちから、ポジティブな気持ちで変わるために、九龍を去ります。同じく小黒も過去の自分とさよならして、未来の自分を探していく決意をして出ていきます。
おそらく、彼らは”後悔”から前に進むことで、もう九龍を見ることはできなくなっていくのではないでしょうか。麻雀おじさまの周さんも同様に前に進んでいくことを工藤に伝えますが、工藤は「捨てるのか」と前に進むことを後ろ向きに捉えています。
工藤は最終的に、G鯨井の存在によって過去の”後悔”から解き放たれ、その時、九龍は消滅するのではないかと考察します。特別な存在であるものの、九龍が見られる人しか視認できないG鯨井が消えるのか、残るのか、それはG鯨井令子の正体がわかった時に判明するでしょう。
6巻の後半で、九龍の一部が崩れたりしているのは、まさに現在存在しているG鯨井に対して強い想いが溢れた瞬間でした。つまり少し前を向き始め瞬間です。ちなみに彼のタバコの銘柄「HOPE(希望)」です。
また、この物語はおそらく「アダムとイブ」の話が絡んでくるものかと思います。2巻で、蛇沼みゆきからもらった絵がアダムとイブで、その時にキスされた味が林檎。しかもG鯨井が使っているリップのブランド名は「EDEN」。完全にアダムとイブの話ですね。
さらにR鯨井が亡くなってしまった蛇沼の薬も丸くて赤い錠剤。蛇からもらった林檎をオマージュ。
人類の新天地であるジェネテラがエデンで、工藤とG鯨井がアダムとイブ? ではその結果は…?
う〜〜ん、ここら辺はまだまだ謎多きですね。
現在判明している事実一覧
・九龍は「後悔」を持った人だけに見える
・Rが九龍に入るとGは消える
・一部Rが九龍にいてもGが消えないケースある
・鯨井令子の死因は薬物の過剰摂取による自殺
・九龍はずっと夏
・ユウロンは鯨井令子を殺したがっている
・九龍に入れているRは「工藤、蛇沼、グエン、ユウロン、楊明、小黒、周さん」
・九龍中に貼り付けられたお札の裏はほぼエラーコードが書かれている
・鯨井Bが死んだ薬は蛇沼グループのもので、お札を使って受け取りが可能
・みゆきは蛇沼に母を救ってくれなかったことへの復讐としてジルコニアン×九龍を利用しようとしている
※「R」はリアル、「G」はジェネリック
残された細かい伏線
小黒はRとGが同時に九龍に存在している
→理由は不明ですが、G小黒は「あの時だって九龍を出たくないって思っていたと」まるで幽霊みたいなことを言っていたのがヒントになりそうです。
周さんは工藤の意識が九龍に影響していると知っていた
→グエンと工藤と3人で話していて、工藤にお店の詳細を伝えた際に、一瞬お店が浮かび上がるが消えてしまいます。その際に、驚いていない様子。さらに工藤に「いい夢みさせてもらった。ありがとう」と感謝している点など、色々と知っていないとおかしい言動がありました。
ユウロンはG鯨井を殺したがっている
→これは、みゆきが九龍にどんどん固執していっている様を案じているのが理由かもしれませんが、具体的な理由は不明です。ジェネテラの実験的な利用かもしれません。
【考察まとめ】九龍に迷い込んだら出られない
10巻までの内容をもとに、九龍ジェネリックロマンスの最終回を含めたネタバレ考察をしてみました。
ここに書いている内容以外にも正直あげたらキリないくらい細かい伏線や気になる発言があって、本当に四六時中、九龍ジェネリックロマンスが頭から離れなくなります。
これらの謎がこれから解けていくということが非常に楽しみですが、ミステリーだけがこの漫画の魅力ではありません。
何回でも見直したくなるノスタルジックな絵やかわいくて自分を持っているキャラクターたち、心に刺さるアイデンティティの名言。そして工藤と鯨井のラブロマンス。
どんどん面白くなるこの漫画の次巻を、ぜひ楽しみに考察していきましょう。