「世界一有名な画家」と言っても過言ではない、20世紀を代表する芸術家パブロ・ピカソ。
スペインのバルセロナにある「ピカソ美術館」には彼の作品が4,000点も所蔵されています。幼少期の作品から、青の時代やバラの時代、「ゲルニカ」のようなキュビズム作品まで幅広く鑑賞可能。
ピカソの有名な作品は一見「子供が描いたみたい」と思われることもありますが、幼少期のあまりにも精巧な絵を見たら、その神童っぷりに目を疑うはず。2025年1月にピカソ美術館を訪れた筆者が見どころをたっぷりと紹介します。

ピカソ美術館とは? 基本情報

住所 | Montcada, 15-23 08003 Barcelona, España. |
最寄駅 | 地下鉄のJaume I駅(駅から徒歩7分) |
休館日 | 月曜日 |
営業時間 | 10:00~19:00 ※季節で変わります |
所有時間 | 1時間〜2時間 |
入場料 | 14ユーロ (18歳未満は無料) |
写真撮影 | 撮影可能 |
ピカソ美術館は、ピカソ本人の希望から友人で秘書を務めたジャウメ・サバルテスが市とかけ合い建てられました。(この時ピカソは82歳)。
サルバルテスは個人所蔵の作品全てを、ピカソの家族も921点寄贈し、それらを中心に作品が展示されています。ちなみにピカソを尊敬していた後輩のサルバドール・ダリも30点ほど寄贈しています。
神童であったピカソ幼少期からの作品はもちろん、貴重なピカソのラフ絵も多く展示されていています。ラフ絵の時点で既におしゃれ、、、!


ラフ絵がポストカードになっているくらいで、私もまんまと購入してしまいました。ピカソは大きく分けても8回絵のタッチが変わるという稀有な画家。美術館では、「青の時代」「バラ色の時代」など時期によって作品をカテゴライズしているので、鑑賞しやすかったです。
天才ピカソの波乱の生涯については以下の記事で詳しく解説しています。

ピカソ美術館の見どころを解説

残念ながら、ピカソ美術館には、最も有名な「ゲルニカ」はありません。(マドリードのソフィア王妃芸術センターにあります)
またキュビズムの名を世界に知らしめた「アヴィニョンの娘たち」はNYのMoMAにあるため、とりわけ有名な作品は展示されていません。
しかし、他ではほとんど観られない幼少期の絵が置いてあり、さらにラフ絵や晩年の作品まで幅広い作品幅が特徴。絵の変容ぶり含め、ピカソという人物を理解するのに最も適した美術館です。
またコチラで詳しく紹介しますが、お土産グッズが特に充実していて、パリのピカソ美術館よりも比較的安価なのも魅力的でした。
ピカソ美術館の有名作品を解説
絵画だけでなく、版画や彫刻も含めるとピカソの作品数は約15万点とギネス記録。それだけの作品数がある中でも、ピカソ美術館では特に鑑賞をおすすめしたい作品を解説します。
1.「科学と慈愛」(1897年)

ピカソが15歳で描いた油彩画であり、マドリードで開かれた国立美術展で入選した作品。まず尋常じゃないくらい完成度高いです。毛布のしわ、人物の指先や表情など細部まで非常に細かく描かれていて、遠近法や光と影のコントラストも巧みです。
これが15歳なんて信じられませんでした。かなり大きい絵なので迫力もあります。タイトルも「科学と慈愛」ってセンスがすごい。横にいる医師を「科学」、修道女を「慈愛」と表現しているのですが、それらをもってしても、社会の不平等は解消できないということを暗示している深い作品です。15歳の着眼点じゃありません。早熟すぎる…。
背景には、溺愛していた妹ジフテリアの死や道端で見る物乞いの親子であると言われています。幼くして不幸や不平等に触れていたことが影響しています。
ちなみに以下もこの時期に描いた絵。写実的な表現はプロ顔負け。この頃が最後で、その後は徐々に自分のスタイルを探し始めます。

2.「ラス・メニーナス」(1957年)
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スパインの宮廷画家ベラスケスの「ラス・メニーナス」をピカソが再解釈して描いた作品。「ラス・メニーナス」は西洋美術史上最も重要な絵画の一つと言われていて、多くの画家がモチーフとして描いていますが、ピカソもその1人でした。

ただでさえ、複雑で見どころの多い絵をピカソが多視点でキュビズム化しているため、初見は??となりました。元の絵と比較しながらピカソがどのように描いているのか観ると面白いです。
ちなみにピカソは75歳を過ぎてから「ラス・メニーナス」を連作で描き始めて、全58作品もあります。ピカソ美術館ではそれだけを飾った部屋があり、さまざまな色合いや構図になっていて、すごく見応えがあります。この空間かっこいいです。




3.「マンティーラをつけた女」(1917年)

個人的には一番ビビッときたのがこちらの作品でした。とにかく目が美しい。さらに周りのスペインらしい赤やオレンジを基調とした点描画的表現が素敵。

1917年、ピカソは「キュビズムの時代」と並行しつつも「新古典主義の時代」へと移行します。
これはピカソがイタリア・ローマを訪れた際、バロック様式の遺跡や都市などに感銘を受けたこと、合わせて翌年に結婚する妻・オルガの影響がありました。

オルガはピカソの描くキュビズムの絵が理解できず、「私のことは、私とわかるように描いて」と伝えていました。上の作品は確かに写実性に富んでいますが、背景は平面的。描こうと思って、このような表現ができるのも天才たる所以です。
4.「鳩の絵(作品名なし)」(1957年)
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ピカソといえば、「鳩」のイメージを持つ人もいるかもしれません。こちらは作品名は特になく、ピカソが「ラス・メニーナス」の分析・研究をしている間の気晴らしに描いた絵です。
絵を描いている気晴らしに絵を描くピカソ。
ますビビットな色合いなのに、むしろ心地よく地中海を感じられます。こちらはピカソ永遠のライバルとして名高いマティスを思わせる作品。マティスはよく窓をモチーフにしていて、さらにビビットな色合いが特徴の画家です。

ライバルとしつつも、リスペクトしていたことでも有名なため、もしかしたら気晴らしにマティスの絵を思い出しながら描いていたのかもしれません。
ちなみに10代の時に書いていた鳩の絵がこちら。本当に同じ画家ですか?笑

【選べない】お土産ショップが充実しすぎ

ピカソ美術館はとにかくお土産グッズが充実しすぎていて、ここに30分以上はかかると思っていた方がいいです。ピカソの絵は理解はしづらい作品が多いですが、やはり色彩が美しく、インパクトもあるので、インテリアに置いてもおしゃれに見えるのが素敵。

このように刺繍の施されたクッションカバーシリーズなどもあります。(こちらは120ユーロ以上…)
ポストカードは1ユーロほどから販売されていて、どれも欲しくなります。

またお買い得だと感じたのは、ポスター。以下の写真上部にある大きめサイズでも10ユーロとかなり安い方です。発色の質が高いわけではありませんが、私は部屋に飾っても全然気にならなりませんでした。種類も豊富です。

このゲルニカのエコバックは欲しかったのですが、おしゃれすぎて日本で使っていると浮きそうで「冷静になれ自分」と思って、買うのを止まりました。でもかっこいい。

ちなみに、芸術家で最も本が描かれているのはピカソだと思います。ギフトショップではピカソに関する伝記、絵本、作品集が半端なく置いてあります。

何度も変わる絵のスタイル、波乱に満ちた恋路、数多くの名作。さらに20世紀に活躍し、91歳と長寿だったので、昔の画家と異なり多く出版ができる環境というのも背景にあります。
ちなみにチケットがなくとも、ギフトショップだけの入場は出来ました。
ピカソ美術館でよくある質問
- ピカソ美術館にゲルニカはある?
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スペインのマドリードにある「ソフィア王妃芸術センター」で所蔵されています。
- ピカソ美術館にアヴィニョンの娘たちはある?
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アメリカのニューヨークにある「MoMA」で所蔵されています。
- ピカソ美術館が無料になるのはいつ?
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木曜の午後は無料ですが、公式サイトで無料チケットを予約する必要があります。また時期によって曜日など変動するため最新情報は公式サイトをご確認ください。
- ピカソ美術館のチケットはいくら?
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大人14ユーロで、18歳未満は無料です。
- ピカソ美術館のチケットがない時は?
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チケットがない場合、チケットを販売している旅行会社が多数あるため、Googleで「ピカソ美術館 チケット」などで検索すれば見つかる可能性が高いです。
- ピカソ美術館のおすすめの回り方は?
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絵の変化と合わせて、各部屋がカテゴライズされています。それぞれの部屋にNoがあるため、それ通りに進武むのがおすすめです。
ピカソの天才っぷりを短時間で味わえる!
ピカソ美術館では、残念ながら最も有名な「ゲルニカ」は観られません。
では行く価値がないのか?
いえ、筆者は「絶対行った方がいい」とおすすめできます。ピカソ美術館の魅力はなんといっても、8変化するピカソの絵の歴史を辿れる点です。初期の写実的な絵からキュビズム全開な絵まで、幅広く鑑賞できるので、ピカソがどのように変化していったのかを肌で感じらるのが貴重な体験でした。
ゴッホやモネなど著名な芸術家の作品を見てきましたが、これだけ幼少期の絵やラフを展示している美術館はそうはありません。
あまりにも異なる絵のスタイルを見ると、複数の画家の作品としか思えず、「ピカソってやっぱり天才だ…」と実感するはず。
ぜひ、美味しいパエリア、ガウディ作品と合わせて、世界一有名な画家の歴史と作品を堪能してみてください。ちなみにフランスにもピカソ美術館があり、以下オランジュリー美術館でも多くのピカソ作品が鑑賞できます。

