パリには「ルーブル美術館」「オルセー美術館」「ポンピドゥー・センター」の3大美術館がありますが、私は断然「オルセー美術館」推し!
なぜなら、モネやルノワール、ゴッホなど印象派の作品を世界で最も展示しているからです。日本でもモネ展があれば行列ができますが、鑑賞できる作品数や種類は比ではありません。
オルセー美術館にはどんな作品があり、その作品にはどんな背景があるのかを知っておくと、同じ金額を払っても何倍も楽しめるはず。もしパリに行く予定がなくとも、オルセー美術館で作品鑑賞したような気持ちを味わっていただけたら幸いです。
有名な作品は時期によって、展示されていないことが多いので注意!美術館の公式HPで検索すると展示状況がわかります。(後述)
オルセー美術館とは? ルーブル美術館との違いも解説
住所 | 62, rue de Lille 75343, Paris |
最寄駅 | Musee d’Orsay Statio |
休館日 | 月曜日、5/1、12/25 |
営業時間 | 9:30~18:00 ※木曜日は21:45まで |
鑑賞時間 | 2時間〜4時間 |
入場料 | 16ユーロ (18歳未満は無料) |
展示種類 | 絵画・彫刻・家具・写真 |
お土産エリアの時間 | 基本営業時間と同じ |
「オルセー美術館」は元々鉄道の駅として利用されていた建物であり、美術館として改装されつつも、入ると巨大な駅舎であることがわかる特徴的な作りをしています。
「ルーブル美術館」が『モナリザ』など1850年頃までのコレクションなのに対して、「オルセー美術館」に展示されている作品は1848年以降1915年頃までと、時代が異なります。
まさに印象派が活躍している時代。「オルセー美術館」は絵画を中心に展示しているため、アートの中で絵が好きな人にはたまらない空間です。逆に古代エジプトの石像や中世のコレクションなどに興味がある場合は、「ルーブル美術館」がおすすめ。ただ作品数が多すぎて1日でも回りきれないため、個人的には途中で疲れてしまいました。
「オルセー美術館」はささっと回ると2時間ほど、お土産を見る時間を含め3時間ほどあるとよいでしょう。お土産情報は記事のコチラ。
なお、印象派の展示は入って真向かいの5階です。体力を使う前に先に観に行くことをおすすめします!あと混むと写真など撮るのも苦労するので、開館時間に合わせて行くのが理想的です。
オルセー美術館の見どころ
「オルセー美術館」の魅力はなんといっても、印象派を中心とした作品の数々。このパートでは、印象派好きが特におすすめしたい、観ておくべき作品と作品背景・エピソードを紹介します!(展示されていたものは写真付き)
観ておくべき印象派の有名作品
草上の昼食(エドゥアール・マネ)
制作年:1863年
作者:エドゥアール・マネ
ある意味、印象派創設のきっかけとも言える絵であり、アート界の革命を起こしたのが「草上の昼食」。当時、裸婦像といえば、神話や宗教、歴史といった場合においてのみ描くものであったが、マネはその一般的な服装をした男性の横に裸婦像をおいた。裸体が理想化されておらず、一般女性であることが当時ではあり得なかったため、この絵は「堕落した恥ずべき作品」と批評された。しかし、神話や宗教的モチーフを日常的な光景へと落とす彼の前衛的な描き方は、後の印象派となる芸術家たちへ多大な影響を与えた。
無意識の炎上作家で有名なマネ。「草上の昼食」もティツィアーノの「田園の合奏」などをオマージュしたつもりですが、アプローチが前衛すぎて炎上しました。
実際に見ると、大きな絵で存在感がすごいです。裸婦像の絵が、やけに生々しく、それなのに横には普通に服を着て談笑している男性たちのアンバランスさ。
遠近法も不正確なのですが、なぜか目が離せない作品でした。手前にあるバスケットや青い布、果物などが背景の緑にアクセントをつけていて色彩バランスが素晴らしかったです。他の印象派作品を観た後も、やたらと記憶に焼きつく絵でした。
ちなみにマネをリスペクトしていたモネが描いた「草上の昼食」もオルセー美術館で観られます。
損傷した部分をモネ自身が破棄したため、一部が切り取られたようになっています。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会(ピエール=オーギュスト・ルノワール)
作者:ピエール=オーギュスト・ルノワール
制作年:1876年
ルノワールが35歳の時に描いた代表作であり、世界で最も有名な絵画の一つに挙げられる作品。ゴッホやドガ、後にはピカソなど多くの芸術家が住んでいたパリ「モンマルトルの丘」。そこに実在した庶民が集うダンスホール「ムーラン・ドラ・ギャレット」を舞台にしている。絵のモデルとなっているのは常連の女性たちやルノワールの仲間たち。当時流行していた「麦わら帽をプレゼントする!」という作戦で多くのモデルを集めた。
私、この絵が大好きになりました。数あるオルセー美術館の中でも一番好きです。
ルノワールの前〜中期に見られる木漏れ日を活かした柔らかな風景と色彩が本当に美しいです。活気あるこのダンスホールの雰囲気が150年経った今でも鮮明に伝わってきます。印象派では、風景画のモネ、人物画のルノワールと言われるように、人物それぞれの醸し出す雰囲気まで再現してしまうルノワール。
それまでフランスでは70年近く続いた内戦がようやく終わり、ルノワールにとっては平和の象徴がこのムーラン・ド・ラ・ギャレットという場所だったのかもしれません。
じっと観ていると、心が安らぎ、広場の音楽が聴こえてくるような気持ちになれます。
ちなみに今でも絵描きなどが集っていて、パリを一望できることからも人気の観光スポットです。
モネの庭、アイリス(クロード・モネ)
制作年:1900年
作者:クロード・モネ
モネといえば、「睡蓮」が最も有名であるが、そのほかにも多くの名作を生み出している。特に青と紫のアイリスが美しく咲き乱れた「モネの庭、アイリス」は、彼の色彩感覚と光の表現が見事に活かされた作品である。この絵を描いた時はモネが60歳の時であり、ちょうど睡蓮を描き始めた頃。モネは睡蓮だけでなくこの庭に咲くアイリスもお気に入りであった。
オルセー美術館にはモネ作品が多数展示されており、そのどれもが素晴らしいですが、個人的にこのアイリスの絵が最も印象的でした。
これだけ紫の色を軸にしたモネの絵を見たことがなかったからかもしれません。手前と奥は影がおちている分、中央に光が多く注いでいて、アイリスの花々を美しく照らしていました。さすが光の画家・モネ。
その他にも「睡蓮の池」など、彼が愛したジヴェルニーの庭の絵が複数展示されています。
モネの生涯やエピソードが気になる人はこちらの記事をご覧ください。
ローヌ川の星月夜 (フィンセント・ファン・ゴッホ)
制作年:1888年
作者:フィンセント・ファン・ゴッホ
世界で最も有名な画家の1人であるゴッホ。彼が描いた夜の風景は実は少なく、有名な「夜のカフェテラス」がゴッホ最初の夜の風景絵と言われている。「ローヌ川の星月夜」も同年に制作したもので、今なおあるローヌ川の堤防の一角の風景を描いている。まだ彼の「耳切り事件」が起きる3ヶ月前の作品。
※私が訪れた2025年1月は展示されていませんでした。
まだゴッホが精神病を患う前であり、独特な”うねり”がありません。水面に反射する光は柔らかく、夜空は繊細で煌びやかな星々に満ちています。
なお、特にゴッホの夜景作品で有名な「星月夜」はNYのMoMA、「夜のカフェテラス」はオランダのクレラー=ミュラー美術館に所蔵されています。
ただその他にもゴッホ作品が多く鑑賞でき、有名なゴッホの自画像は最も人だかりが凄かったです。
「耳切り事件」など壮絶で濃厚すぎるゴッホの生涯をまとめた記事や、オランダのゴッホ美術館のレビュー記事もぜひご覧ください。
エトワール(エドガー・ドガ)
制作年:1876年
作者:エドガー・ドガ
ドガの最も有名な代表作。同世代の印象派画家の中でもひときわデッサン力が優れていると評価されるドガは、生涯の作品の半分ほどをバレエの絵に費やした。中でも「エトワール」(バレエの花形スター)は今にも動き出しそうな躍動感ある動きと繊細で緻密な衣装が高く評価されている。
※私が訪れた2025年1月は展示されていませんでした。
ドガは内気でぶっきらぼうな性格であったといわれています。孤独なイメージがあるドガですが、作品は対象的に華やかな印象を受けるバレエの絵がほとんど。彼がバレエをテーマにしていたのは主に2つの理由があります。
一つは兄の多額の借金の返済のため、売れるバレエの絵を中心に描いていたこと、もう一点は彼の性格です。「同じ主題を10回でも100回でも描かなければならない。」というのがドガの理念であり、ひたすらに突き詰めていくスタンスがドガ流でした。
なお、「エトワール」を含め、ドガの作品では頻繁に登場する中年男性の影があります。それは当時のパトロンと踊り子の隠れた関係性を暗示していました。バレリーナの当時の地位は低く、バレエで目立つことで、パトロンからの支援を受けるという売春的な構造があったのです。ドガはそういった社会の残酷な現実も描いていました。
カード遊びをする人々 (ポール・セザンヌ)
制作年:1890年
作者:ポール・セザンヌ
歴代高額取引絵画で3位(約2億5000万ドル)となったセザンヌの名作。タイトル・モチーフが同じ絵が5枚あり、上記金額で取引がなされたのはカタール王室にあるもの。ただ最も有名なのはオルセー美術館にある本作のため、取引されたらさらに高額になる可能性はある。実は1961年に盗難に遭い、犯人の提示した金額を支払い、数ヶ月後に戻ってきたというドラマのある作品。
セザンヌと言えば、ゴッホ・ゴーギャンと並んでポスト印象派の御三家の1人です。
さらにセザンヌは「近代絵画の父」とも呼ばれていますが、それは彼が後にピカソなどが作り出したキュピズム(多視点で見て再構築する絵画手法)の原型的な描き方をしていたためです。
有名なりんごの静物シリーズでは、正しい遠近法と描写法を行わず、モチーフを斜めや横から見たように描いています。ただそこにあるものを描くのではなく、多視点で対象を見つめ直すという彼独自のアプローチがその後の芸術へ大きな影響を与えました。
「カード遊びをする人々」はセザンヌ晩年の作品ということもあり、独特の歪んだ静物ではありませんが、こちらも当時としては違和感のある絵でした。
カード遊びをする人というのは17世紀頃からあるモチーフですが、通常は金、女性、酔っぱらいたちの喧騒などその世界観を誇張するものが置かれるにも関わらず、彼の場合はただ仏頂面で真剣にカード遊びをする人々だけ。いわゆる盛って魅せるということをしません。その他の作品同様に肉体や服装もリアルな質感で描くことはしません。セザンヌらしい反骨精神的な部分が垣間見える絵です。
印象派以外のおすすめ作品たち
印象派やポスト印象派を除いても多くの作品がありますが、個人的には印象派の少しだけ前である1820年〜40年代頃に輝いていたロマン派のオリエンタル作品(中東を描いた作品)もおすすめ。
メッカへ向かう巡礼者たち(レオン・ベリー)
圧倒的なリアリティさから、乾いた砂漠地帯の風やラクダたちの獣臭まで感じられるようでした。ロマン派の描写力半端ない、、、
アルビトの少女たち(エルネスト・エベール)
見た瞬間に、「あれ、左の人、齋藤飛鳥じゃね?」と感じました。それはたまたまモチーフが似たいたのかもしれませんが、人間の目や表情、服装の質感など非常にリアルに描かれていました。
地獄の門(ダンテ)
館内を歩いていると、立派な(おそらく知っている人からしたら超有名)彫刻があります。その中でも写真を撮っている人が多く、なんだろう?と思ったら抜群の存在感と大きさを誇る彫刻がありました。ロダンの『地獄の門』です。
日本の東京国立美術館に本物のブロンズ『地獄の門』がありますが、コチラはロダン本人が作成した石膏原型。ブロンズよりも明るく見やすいため、細かく細部を確認できます。(ブロンズは石膏原型を元に作成されるもの)
オルセー美術館のお土産グッズを紹介
オルセー美術館には、入り口と印象派が展示されている5階の2箇所にお土産コーナーがあります。
基本的には、美術館の営業時間に合わせてお土産コーナーも開いているのですが、年末年始など一部のホリデー期間は16時半までと美術館の営業時間より早めに閉まってしまうので注意しましょう。
置いてあるお土産はよくあるポストカードや大きめなポスター、印象派の絵が入ったトートバックや文房具類、それに一部ミッフィーと作品コラボなどがあります。
その他、画家ごとの作品集などありますが、それらはフランス語になっているので、内容は理解できない場合はちょっともったいないかもしれません(ただ観ているだけでも楽しい…)
画家たちの生涯や特徴を絵本にまとめたものなども絵柄が可愛かったです!
なお、金額としてはポストカードなど安いもので、1.5~2ユーロ、少し大きめなポスターで10〜15ユーロほどでした。
個人的におすすめなのは、カレンダー!好きなアートの各作品がおしゃれに入ったカレンダーは、家のインテリアにもいいですし、気分が上がるはず。(コチラは15ユーロほど)
有名作品が観れないことも多い
私は特にゴッホが好きため、ゴッホの超有名作品「星降る夜」を楽しみにしていたのですが、その時期は修繕のためか鑑賞できませんでした。
そのほかにもミレーやドガ、ゴッホの一部作品などが観られず残念でした。
それでも十分すぎるほどに楽しめましたが、大きな美術館のため、常に何かしらの有名作品は貸し出しを行なっていたり、修理修繕をしているようです。
そのため、観たい作品が決まっている場合は、事前に公式ホームページの作品一覧で確認しましょう。
フランス語になっていますが、Googleの右クリック→日本語に翻訳として、検索するとよいです。それでも出ないときは作品名をフランス語か英語にして調べてみてください。作品がヒットしない場合は、展示していないようです。
【まとめ】印象派のロマンがそこにある
名だたる印象派の絵画が展示されたオルセー美術館。そこに入ると、まるで印象派の全盛期にタイムスリップしたような感覚を味わえます。
「ああ、マネ先輩の絵を観てモネやセザンヌたちはこんな風に自分なりに解釈したんだ。」
「モネとルノワールって仲良く同じモチーフの絵描いているけど、全然感覚違うんだ。本当はそれぞれの絵についてどう思ってたんだろう?」
などなど、同時に多くの芸術家たちの絵を観られることで様々な角度から絵と歴史を感じられるはず。
それはまさに、ロマンです。
150年前のパリの風をそっと感じに、オルセー美術館へ行ってみてはいかがでしょうか。