4月の東京は、新緑とともにアートの季節が本格的に動き出します。
印象派の誕生を陰で支えた画家から、謎めいた世紀末の異才まで、今月YuReLが「いま行くべき」と推したい5つの展覧会をお届けします。

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アートの世界を紹介するアートライター
01. ウジェーヌ・ブーダン展 ─瞬間の美学、光の探求

ウィリアム・ターナー同様に「印象派の先駆者」という肩書き持つブーダン。
日本では約30年ぶりとなる今回の展覧会では、フランスから油彩・素描・パステルなど約100点が来日します。
| 詳細 | 2026年4月11日(土)〜 6月21日(日) |
|---|---|
| 会場 | SOMPO美術館 |
| 住所 | 東京都新宿区西新宿1-26-1 |
| 開館時間 | 10:00〜18:00(金曜は20:00まで) |
| 料金 | 一般 2,000円(事前1,800円)/ 25歳以下 1,200円 / 高校生以下 無料 |
| 公式サイト | https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2025/eugeneboudin/ |
| 公式Instagram | 公式サイトにてご確認ください |
この展覧会の見どころ
ブーダンといえば「空の王者」という異名が示すとおり、ノルマンディーの空と海を描き続けた画家です。移ろいゆく光と雲を戸外で直接観察するその制作姿勢は、若きモネに決定的な影響を与え、のちの印象派誕生へとつながっていきます。
本展では「海景」「空」「風景」「素描」など8つの切り口からブーダンの全貌を紹介。海景画の印象が強い画家ですが、人物や建築を描いた作品にもブーダン独自の空気感と光の繊細さが宿っています。
印象派誕生から150年という節目に、その「源流」をじっくりたどれる貴重な機会です。
[ ARTIST ] ウジェーヌ・ブーダン(Eugène Boudin) 1824年フランス・ノルマンディー生まれ。船乗りの子として育ち、バルビゾン派との交流を通じて画家の道へ。1850年代半ば、青年期のクロード・モネと戸外制作を共にしたことが印象派誕生の原点とも言われる。移ろう自然の「瞬間」を捉えた作風はカミーユ・コローらに「空の王者」と称えられた。

02. ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶

パナソニック汐留美術館が世界で唯一「ルオー・ギャラリー」を持つ美術館なのはご存じですか?
約270点のコレクションを誇る同館が、近年新たに収蔵した作品を中心にルオーの全貌を改めて問い直します。
| 詳細 | 2026年4月11日(土)〜 6月21日(日) |
|---|---|
| 会場 | パナソニック汐留美術館 |
| 住所 | 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F |
| 開館時間 | 10:00〜18:00(一部金曜・土曜は20:00まで) |
| 料金 | 一般 1,200円 / 65歳以上 1,100円 / 高校・大学生 700円 / 中学生以下 無料 |
| 公式サイト | https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/26/260411/ |
| 公式Instagram | 公式サイトにてご確認ください |
この展覧会の見どころ
本展のキーワードは「アトリエ」。ルオーが作品を生み出した場所に焦点を当て、初期から晩年までの代表作を通じて制作の軌跡をたどります。
なかでも注目したいのは、パリのルオー財団の特別協力のもと実現したアトリエの一部再現展示。身近な家族でさえ立ち入りを禁じていたという「聖域」の空間が、当時の画材道具や机とともに蘇ります。
ギュスターヴ・モロー、マティス、マルケとも同じ教室で学んだルオーが、独自の厚塗りと鮮烈な色彩でたどり着いた境地——見るほどに画家の内面へと引き込まれていく展覧会です。
[ ARTIST ] ジョルジュ・ルオー(Georges Rouault) 1871年パリ・ベルヴィル生まれ。14歳でステンドグラス職人に弟子入りし、その後ギュスターヴ・モローのアトリエへ。マティスらと「サロン・ドートンヌ」を創設しフォーヴィスムの一翼を担う。キリスト教主題や社会の底辺を生きる人々を描いた作品で知られ、厚く塗り重ねた絵具と黒い輪郭線が特徴。

03. アンドリュー・ワイエス展

「クリスティーナ・ワールド」という絵画をご存じでしょうか? 草原に横たわる女性を遠くから見つめた、あの一枚。

アンドリュー・ワイエスは20世紀アメリカを代表する具象画家でありながら、抽象表現主義が席巻した時代にあえて自分の身近な人々と風景だけを描き続けた画家です。
| 詳細 | 2026年4月28日(火)〜 7月5日(日) |
|---|---|
| 会場 | 東京都美術館 |
| 住所 | 東京都台東区上野公園8-36 |
| 開館時間 | 9:30〜17:30(金曜は20:00まで) |
| 料金 | 一般 2,300円(前売2,100円)/ 大学・専門学校生 1,300円 / 65歳以上 1,600円 / 18歳以下 無料 |
| 公式サイト | https://www.tobikan.jp/exhibition/2026_wyeth.html |
| 公式Instagram | 公式サイトにてご確認ください |
この展覧会の見どころ
本展はワイエス没後初となる待望の回顧展。1974年に日本で32万人を動員した個展以来、幾度も開催されてきたほど日本でも根強い人気を誇ります。
今回は「境界」をテーマに、窓やドアなどの境界的モチーフに着目した構成で、ワイエスが描いた世界の核心に迫ります。
テンペラやドライブラッシュと呼ばれる独自の技法で描かれた作品の数々は、写真かと見まがうほどの緻密さ。それでいて見ているとどこか静かな寂しさが漂ってくる——その不思議な余韻こそ、ワイエスの最大の魅力です。日本初公開の作品も含む充実のラインナップで、ゴールデンウィークのお出かけにもおすすめの一展です。
[ ARTIST ] アンドリュー・ワイエス(Andrew Wyeth) 1917年アメリカ・ペンシルベニア州生まれ。挿絵画家の父N・C・ワイエスのもとで独学で絵を学ぶ。テンペラやドライブラッシュを駆使した緻密な具象絵画で知られ、ニューヨーク近代美術館(MoMA)にも作品が収蔵される。抽象が主流の時代にあって写実を貫き、20世紀アメリカ具象絵画を代表する存在として評価された。
04. スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照

「カール・ヴァルザー」という名前、おそらく初めて聞く方がほとんどではないでしょうか。
しかし、展示された作品を見れば、その謎めいた神秘性と精妙な色彩に誰もが目を奪われるはずです。
| 詳細 | 2026年4月18日(土)〜 6月21日(日) |
|---|---|
| 会場 | 東京ステーションギャラリー |
| 住所 | 東京都千代田区丸の内1-9-1(JR東京駅 丸の内北口 改札前) |
| 開館時間 | 10:00〜18:00(金曜は20:00まで) |
| 料金 | 一般 1,800円(前売1,600円)/ 高校・大学生 1,300円 / 中学生以下 無料 |
| 公式サイト | https://www.ejrcf.or.jp/gallery/ |
| 公式Instagram | @tokyostationgallery |
この展覧会の見どころ
20世紀前半のスイスで活躍したカール・ヴァルザーは、ベルリン分離派に加わり象徴主義的な絵画を数多く残した画家です。そこはかとない暗さと精妙な色彩が神秘性を湛え、一度見たら忘れられない吸引力があります。
本展の特筆すべき点は、全作品が日本初公開であること。さらに1908年に来日したヴァルザーが東京や京都・宮津に滞在して描いた日本の風景・風俗画も展示されます。
これまでほとんど公開されてこなかったため色彩が驚くほど鮮やかに残っており、120年前の日本の情景が鮮明に甦ります。知る人ぞ知る存在だからこそ、先入観なく向き合える稀有な展覧会です。
[ ARTIST ] カール・ヴァルザー(Karl Walser) 1877年スイス・ビール生まれ。シュトラスブルクの美術工芸学校で学んだ後、ベルリンに出てベルリン分離派に加わる。象徴主義的な絵画のほか、挿絵・舞台美術・壁画など多岐にわたり活躍。1908年に来日し、日本の風景や風俗を水彩で精力的に描いた。詩人として知られる弟ローベルト・ヴァルザーの著作に挿絵を描いたことでも知られる。
05. 下村観山展

横山大観、菱田春草と並び、近代日本画の革新を担った巨匠・下村観山(1873〜1930)。その全貌が関東で13年ぶりに問われます。
| 詳細 | 2026年3月17日(火)〜 5月10日(日) |
|---|---|
| 会場 | 東京国立近代美術館(竹橋) |
| 住所 | 東京都千代田区北の丸公園3-1 |
| 開館時間 | 10:00〜17:00(金曜・土曜は20:00まで) |
| 料金 | 一般 2,000円(前売・団体1,800円)/ 大学生 1,200円 / 高校生 700円 / 中学生以下 無料 ※本展チケットで当日「MOMATコレクション」も観覧可 |
| 公式サイト | https://art.nikkei.com/kanzan/ |
| 公式Instagram | @momat_jp |
この展覧会の見どころ
狩野派・やまと絵・琳派・中国絵画、さらにはイギリス留学で吸収した西洋表現まで、東西の絵画技法を自由自在に操ったのが観山の真骨頂。重要文化財《弱法師》をはじめ、150件超の傑作が一堂に集います。
今回特に見逃せないのは、大英博物館所蔵作品の初里帰り。イギリス留学中に現地の東洋美術研究家へ贈った自作が、初めて日本に戻ってきます。また会場では4倍単眼鏡の貸出(300円)も実施予定で、観山の繊細な筆技を細部まで堪能できる工夫も。
日本画に馴染みがない方にとっても、その超絶技巧に圧倒される体験になるはずです。
[ ARTIST ] 下村観山(しもむら かんざん) 1873年和歌山生まれ。橋本雅邦に学び、東京美術学校の第一期生となる。岡倉天心とともに日本美術院の設立に参加し、横山大観・菱田春草らと新時代の日本絵画を切り拓く。日本画家初の文部省留学生としてイギリスに渡り、西洋絵画の視野も獲得。狩野派から琳派、やまと絵まで東西の伝統を融合させた卓越した筆技で知られる。

春から初夏へ、アートとともに
ブーダンからルオー、ワイエス、ヴァルザー、そして観山まで、国も時代もジャンルも違う5つの展覧会が、今月の東京に揃っています。
それぞれがまったく異なる「絵を描くこと」への姿勢を持ちながら、どの展覧会にも共通しているのは、「ただ見る」だけでは終わらない奥行きがあること。
ゴールデンウィークのお出かけ先に迷ったら、ぜひ美術館を選択肢のひとつに加えてみてください。



