スティーブ・ジョブズが愛した日本の芸術として、近年注目を浴びている「川瀬巴水」。そんな巴水の作品を含む、新版画の展覧会が2025年2月15日から川崎で始まりました。
最近、新版画に興味を持った筆者が早速行ってきたので、レビューします。
「新版画 風景画の変還」の概要

住所 | 川崎駅前タワーリバーク3階 |
最寄駅 | 川崎駅から徒歩3分 |
休館日 | 月曜日 |
営業時間 | 11:00~18:30 ※入館は18:15まで |
所有時間 | 1時間ほど |
入場料 | 500円(高校生以下無料) |
写真撮影 | 展示室中は撮影不可 |
2月から始まったこちらの展覧会。3月20日から後半として、川瀬巴水をはじめ、近年注目される笠松紫浪や石渡江逸らの未公開作品も展示されています。
また新版画の歴史を語る上で欠かせない「風景版画の第一人者」歌川広重の作品も多くはありませんが、展示されています。
この展覧会に行けば、新版画の歴史や主要の作品を鑑賞できるので、かなりコスパがいいなと感じました。
「新版画 風景画の変還」の見どころ

個人的にはなんといっても、新版画の第一人者とも言える風景版画「川瀬巴水」の作品が観られる点です。
どんな作品があるのか? 現在展示されていた作品で著名なものをいくつかピックアップしました。
『馬込の月』(1930年)

『芝増上寺』と並び川瀬巴水の代表作。雲間から照らす月明かりに、浮かび上がる松の大樹の存在感がすごい。新版画の風景画ではフィクションではなく、自然をあるがまま描いていました。
ということは、当時はこんな手付かずの自然が家の近くにあったんだなと思い浮かべると、自然の強さや尊厳が今の時代と違ったんだろうなと思いました。
ちなみに、当時、巴水はこの三本松から歩いて20分くらいのところに住んでいて、現在松はありませんが、「三本松」というバス停は残っているようです。
ちなみに以下記事では川瀬巴水の生涯を代表作と共に深ぼってるので興味がある人はのぞいてみてほしいです。

『芝大門之雪』(1936年)

川瀬巴水といえば、「雪・雨・海」と言えるほど、水にまつわる作品が非常に多く、特に雪は巴水の専売特許と言えるほど卓越していました。
降り積もったまだ柔らかい雪の質感と、風が強いことが窺える雪の舞い方が素晴らしいです。
さらに巴水では珍しい自動車が入った一作。浮世絵だと表現や出てくる物が現代と離れすぎていて、実感が少ないこともしばしば。それに比較すると、現代的な物も交わるのが新版画の面白いところだなと感じました。
『松島双子島』(1933年)

今なおある宮城県・松島の双子島を描いた作品。関東大震災前にも同様に松島で描いていますが、震災前後で、心境の変化があったのか、巴水はより明るい色調になっていきました。

静かに揺れる水面の音が聞こてくるような美しく優しい作品。また新版画の技法であるバレン筋を残す「ざら摺り」を用いて、月夜の澄み切った空気感を表現しています。
展示されているその他の巴水作品は以下を参考にしてください。

その他の展示作品はどんな作品?
川瀬巴水を除き、特に多く展示されていたのは、「吉田博」と「石渡江逸」の作品でした。
吉田博は有名な『桜八選』シリーズ、石渡江逸は、彼が得意とした日常の庶民の風景画が主に展示されています。
ちなみに私は石渡江逸の作風とても好きでした。
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川瀬巴水の門下というだけあり、巴水のように色調が鮮やかで美しく、さらに彼独自の構図や光の明暗加減、風景だけでなく人にも焦点をあてた作風が刺さりました。
ちょっと分かりづらい展覧会へのアクセス
駅からすぐ近くなのですが、若干会場までのアクセス分かりづらかったので、少しこちらに行きかたを記載しておきます。
まず川崎駅の西口を出ます。このatreがあるところ。

西口を出たら左に進めばすぐに川崎駅前タワー・リバークが見えます。

ここで右側のエスカレーターに上がりたくなってしまうのですが、エスカレーターでは2階までしか行けません。
ここ間違いやすそうです。1階の真ん中付近にエレベーターがあり、3階にはこのエレベーターに乗ると行けます。

3階まで行けたらあとはチケットカウンターがあるので、そこで500円支払えばチケット発行ができます。

私は日曜日のお昼の時間に行きましたが、中には5〜6人の人がいました。小さめな部屋なので、10人以上いると少し混雑しそうですが、程よい混み具合でした。
年齢層は40〜60代くらいの方が多かった印象。騒がしくなく、落ち着いた雰囲気で楽しめるでしょう。
【まとめ】今のうちに行くべしな展覧会

「Apple」の生みの親であるスティーブ・ジョブズが川瀬巴水好きであったことなどが話題になり、去年あたりから特に新版画の展覧会が人気となっています。
今はまだ500円で特に有名な作品も気兼ねなく鑑賞できますが、そのうちに人気が高まると日本だでなく海外への展示などが起こりえます。そうなると簡単には鑑賞できなってしまうかもしれません。
大正〜昭和にかけての日本の風景・空気感を味わえる素敵な展覧会なので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

