堀元 見『教養(インテリ)悪口本』のレビュー・感想|知恵袋エッセイ Vol.2

こんにちは、ライターのMizuhoです。

私の周りは面白い人ばかりです。なぜ面白いのか共通点を探したところ、語彙力がすごい。その富んだ語彙力で語られる話を聞き、気持ちよく爆笑したあとにふと冷静になって「それ悪口じゃない?」と気付くのです。それに、私が不快だった出来事を話すと、全部笑い話に変えてくれます。

その力が大変うらやましくて、私もそうなりたいと思っていたところ、本屋でちょうど良い本に出逢っちゃいました。

教養(インテリ)悪口本』です。

今回は、どうせなら人を笑顔にできる悪口を言おう!感情を吐き出して、ついでに教養も身につけちゃおう!というハッピーセットのご提案です。

Mizuho

東京でひっそり暮らすアラサーの会社員。趣味は人間観察と面白いこと探し。最近新しくできたあだ名は「分析」。教養悪口本で一番好きな悪口は「ナポレオンっぽいね〜」

目次

『教養悪口』(インテリ悪口) の概要

世の中には「面白い悪口」も存在する。

堀元見『教養悪口本』ーはじめに
サイズB6版
ページ数 245
値段1,500円+税

作者について

堀元 見(ホリモト ケン)。(たぶん)世界で唯一のインテリ悪口専業作家。某有名大学卒業後、「インターネットでふざける」を職業にする。「インテリ悪口で人をバカにする有料マガジン」がウケてそれだけで生活ができるようになったため、インテリ悪口作家を名乗り始めるようになった。
(本著の作者紹介より改変して抜粋)

内容

日常のモヤモヤを笑いと教養に変える38のロジカル巧言。

知性とユーモアに富んだ悪口が一冊にぎゅっと詰め込まれている。論理学、行動経済学、歴史学、文学、応用数学、宗教学など幅広い学問から引っ張り出した事象を、馴染みやすい文章でわかりやすく説明してくれる。日常での活用例付き。

「こいつ無能」と言いたくなった時は、代わりに「植物だったらゲノム解析されてる。」と言おう。周囲も「え?何?どういうこと?」と興味を惹かれるだろうし、生命科学の発展に思いを馳せる良い機会になる。

不快さを、楽しさや知的好奇心に変えられるのが、「正しい悪口」の効能なのだ

堀元見『教養悪口本』ーはじめに

「悪口」と題しており、皮肉たっぷりな記載方法ではあるが、見方を変えると「高尚な例えツッコみ」にもなり得る。「アナニアとサッピラかよ 対象:メンタルが弱い人」等、フレーズの対象者を一言で伝えてくれている。“対象”がフレーズと教養を結びつける重要ワードになっていたりと、著者は頭が良すぎる。

【目次あり】こんなあなたに読んでほしい

著者曰く、おもしろ雑学が好きで、ちょっと底意地が悪い人 に読んでいただきたいようです。

皮肉&悪口祭りなので、誰が読んでも面白いのは前提ではあります。今回は私視点で、こんな人が読んだらただの悪口本で終わらないのではないか?と思う特徴を紹介いたします。

1.厨二病が完治していない

長いカタカナがたくさん並んでます。

・植物だったらゲノム解析されてる

・その企画、パリティビットが意味をなさない品質ですね

・レディ・マクベス効果でそろそろ手を洗いたくなってくる

・mp3が定着したのは君のお陰だよ

・ルンペルシュティルツヒェンじゃないんだから

堀元見『教養悪口本』ー目次

これをスラスラ言えたらかっこいいな〜って思った方はいらっしゃいませんか?大変おすすめです。

⚫︎植物だったらゲノム解析されてそう。

シロイヌナズナは植物として初めて全ゲノム配列が解析されたのだ。解析の結果、「人間にとってなんの役にも立たない植物」であることがわかった。このシロイヌナズの特徴を活かした悪口が、「植物だったらゲノム解析されてそう」である。

⚫︎レディ・マクベス効果でそろそろ手を洗いたくなってくる

行動経済学の実験結果で、人は悪事を想像した後、石鹸や洗剤を買いたくなるらしい。魂が汚れた感覚になり、汚れを洗い流したくなるそうだ。よって、悪いことしている人に使いたい悪口が「レディ・マクベス効果でそろそろ手を洗いたくなってくる」である。この現象はシェイクスピアの戯曲『マクベス』にちなんで命名された。(夫(国王)を殺して、邪魔な人殺しまくったマクベス夫人が精神崩壊してずっと手を洗っている作品らしい。

著者はさまざまな学問の知識もサラッと紹介してくれているので、興味があればそれをヒントに知識の深掘りができます。悪口の本買ったつもりが、そこに付随した知識も身につきます。最高です。

私は厨二病なので、頭の良さそうな言葉を的確に言えるようになりたいです。かっこいいので。

2.ちょっとだけ心がきれい

めちゃくちゃ皮肉たっぷりなおもしろ悪口を、240ページ綴っている「教養悪口本」のあとがきで著者が引用している忌野清志郎さんの言葉です。

ユーモアが大切なんだ。ユーモアのわからない人間が戦争を始めるんだ

忌野清志郎「瀕死の双六問屋」

イラっとすることがあっても、我慢したり不満を押し込めてしまいがちな、ちょっと心がきれいな人におすすめです。完全に心がきれいな人は、イラっとしないと思うので「ちょっと」が大事です。

知性と品性が宿った言葉で、目の前の不愉快をぶった斬り、自分や他人を笑顔にしてあげるのはどうでしょうか!という、私からの提案になります。

3.どちらかというと思慮深い

本著は、思慮深い人だと、余計に楽しめる本だと思います。

自分にも他人にも常に完璧を要求すべきではない。完璧主義者は論駁されるべき信念なのである

堀元見『教養悪口本』 P.42

本著は、悪口だらけですが、背後には著者からのメッセージが見え隠れしています。普通の人が読んだらただの「悪口本」ですが、思慮深い人が手に取ったら、本から得られるものは悪口のボキャブラリーだけではない気がしています。

そんなあなたがこの本を読んだ感想が知りたいので、思慮深い人におすすめしたいです。ただのお願いでもあります。

【感想】このボキャブラリーをスタック管理からデータベースに移行したい

※見出しのフレーズは、本著P103より習得しました。対象者は「憶えた言葉をすぐに使う人」です。

「面白そう。頭良さそう、かっこいい。」という超単純な動機で買った『教養(インテリ)悪口本』は、ぶっちゃけ日常会話で使えない悪口ばかりです。それに、雑学をよく知っている人にしか通用しないです。ですが、思いがけない良い気付きがあったので、総じて読んでよかったです。

気づきの1つ目は、ネガティブな事実を明るく伝えることができる表現に出会えたことです。

体調不良などを第三者に伝える&病院に行く必要がある時に「国際研究協力に向いている題材かどうかチェックしてくる!」など言えば、相手の意識は「謎の語彙」に集中し、心配されなくてすみそうです。私も使命感を持って病院に行ける気がします。

2つ目は、嫌味回避&撃退方法が身についたかもしれないことです。

若かりし頃は、お酒が弱いことを伝えると、嫌な態度を取られたことがありました。この知識があれば「私先祖が汚くて〜」と言うことで、別の話題に持っていくことができたかもしれないです。そして、酒強自慢に苦笑していた場面では、「○○さんも先祖汚かったんですね!」と言うことでスッキリできていたかもしれないです。今後は嫌味を言われたら、知性のある皮肉を返し、その場を凍て付かせてやりたいと思います。

⚫︎先祖が汚かなった

「人間は汚い環境に耐えるためにアルコールへの耐性を進化させた」という説がある。人類で農耕が盛んになった時代、人間が密集して定住し始め、同じ場所に糞尿をし続けたことにより水辺の環境は悪化。水が不衛生な飲み物となり、代わり飲まれるようになったのが殺菌効果のあるアルコールだ。酒が強い=酒に強く進化した先祖がいる=先祖がより汚い環境にいたというトンデモ解釈ができる。よって、酒強い自慢をしてくる人に使える悪口なのである。だが、全く逆の説もある。それ故、酒が強い人にも弱い人にもこれは使用できる。その説については是非本著にて確認してみていただきたい。

そして最後は、「行動経済学」に興味を持てたことです。著者が「人間ってめちゃくちゃバカだなあ」と言うことを楽しめる学問であると紹介してくれていたので、学ぼうと思えました。ずっと好きなジャンルの本ばかり読んでいた私は、知らぬうちにペリクレス戦略を続けていたのかもしれません。

あ、あまり長々と描きすぎるとネルソン提督になっちゃうので、この辺でやめておきます。

「なんだこの感想」って思われたら、ぜひ『教養(インテリ)悪口本』を読んで、再度確認しに来てほしいです。お待ちしています。

YuRuLi
サイトの管理人
TOKYO | WEB DIRECTOR
Youtube登録者19万人。
本業以外に、日常に溶け込むプレイリスト動画の作成や音楽キュレーションの仕事も。音楽、ガジェット、家具、小説、アートなど、好きなものを気ままに綴っていきます。自分の目や耳で体験した心揺れるものを紹介。

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