こんにちは、ライターのゴンです。
当記事ではアキ・カウリスマキ監督の「マッチ工場の少女」についてネタバレありの感想レビューを書いていきます。
感想を一言で表すと「どこがコメディだよ、ふざけんなよ」です。
★★★★★:大好き、一生覚えてる
★★★★☆:好き、人にすすめたいくらい
★★★☆☆:まあまあよかった
★★☆☆☆:あんまり好みじゃないかも
★☆☆☆☆:見なくてもよかったかも
「マッチ工場の少女」の概要
監督 | アキ・カウリスマキ |
脚本 | アキ・カウリスマキ |
主演 | カティ・オウティネン |
ジャンル | コメディ/ドラマ |
制作国 | フィンランド |
上映年 | 1990年 |
上映時間 | 約70分 |
配信先VODサービス | U-NEXT / DMM TV / Hulu / FOD / Lemino |
「マッチ工場の少女」のジャンルはコメディ
冒頭でああは書いたのですが、面白いです。コメディです。腹抱えて笑ったりはしませんが、思わずニヤついたりしちゃうシーンがたくさんあります。
アキ・カウリスマキ監督の映画を見たことがある人なら共感いただけると思うのですが、この監督の作品は「空気ありき」な感じがするんです。独特の間とか、シュールな絵面とか、それらを目で見て、感じて面白いというか。
そういった要素を排除してストーリーの要点のみを追うと、個人的にはもう無慈悲すぎてあんな感想になってしまう感じです。
「マッチ工場の少女」のあらすじ
舞台はフィンランドの田舎町。マッチ工場で働いて得るわずかな金で母と義父を養う少女が行きずりの男と関係を持つも裏切られ、その復讐に走っていく…というお話。
物語はマッチ工場の映像から始まります。原材料の大きな木片が機械によって裁断されたり、洗われたりやら。ASMRの類に属するんでしょうか、こういった秩序だった機械の動きというのはなぜか見ていて心地の良いものです。この時点では「へぇ〜マッチってこんなふうに作られるんだなぁ」と感心しながら呑気に眺めていたものですが、ここから主人公の少女はベルトコンベアーに乗ったマッチよろしく地獄へと一直線へ運ばれていきます。
少女の生活は辛いものでした。自分の賃金で養われているはずの義父は少女を食いぶちとしか見ていないし、頼みの綱の実母もおんなじような感じ。というか少女に関心がない。血を分けた母なのにあの感じはきつい。感謝をされることはなく、そのうえ自分のための贅沢も許されない。街で一目惚れしたドレスを買って帰った際には「返品してこい」と顔面を引っ叩かれていました。
自分が愛されていない、誰からも関心を向けられていないという事実を痛感し、ここから少女は大きな過ちを犯していくことになります。
「マッチ工場の少女」を観た感想(ネタバレあり)
物語はバッドエンドで終わります。作風が淡々としているのであまり深刻に感じない人もいると思いますが、結構きつめのバッドエンドです。
世界中で、もちろん日本でも、現実世界で起き続けているバッドエンドです。愛情の不足が少女を狂わせ、周囲も巻き込んだ最悪の結末に行きつきました。少女の行動は側から見ると「いや短絡的すぎるだろ」という印象ですが、それほどまでに彼女は愛情に飢えていたのだと思います。
だから偶然行き合った愛情じみたものにあそこまで心を狂わされたのでしょう。この物語で起きてしまったことの責任の所在はどこにあるのか。それは実際、そのことが起こりうる環境を作り上げてしまった人たち、この映画で言えば母と義父にあたるんじゃないのかと思います。
最後に
個人の感想としてはこんな感じで、人によっては「重そう」という印象を持たれるかもしれませんですが、それはもうこの監督の手腕でなぜか面白く観れてしまいます。キャラクターの魅せ方や映像美による影響が大きいのかもしれません。
この監督の作品に登場する人物は、みんな恐ろしく表情筋の動きが乏しく何考えてるのかわからないのに、謎の愛着が生まれるような不思議な魅力があります。また、映画内の家具やインテリアも北欧独特の装飾で眺めているだけでも楽しいです。
そして個人的にとても好みなのが、光と影の使い方です。この監督の作品はどれも少し抜けているというか、緊張感のない空気感のものが多いのですが、そんな中で不意にあらわれる、光と影の境界がはっきりとした鮮烈で美しいイメージの数々にははっとさせられるものがあります。
話のテーマ自体は普遍的なものであるし、ビジュアルとしても眺めているだけで楽しめる作品です。人によっていろんな楽しみ方ができる作品なので、一度は試聴価値ありだと思います。