【展覧会レポ】ウジェーヌ・ブーダン展-瞬間の美学、光の探求を見て

ロマン派・写実派の時代から印象派が開花していくまでの期間、フランスでは海と空の刻一刻とうつろう”瞬間”を描こうと試みた画家がいました。

それがモネの師匠として名高いウジェーヌ・ブーダン。

日本では30年ぶりとなるブーダンの回顧展が開かれているので、本記事ではブーダンについても触れながら見どころなどをレポートします。

筆者:ゆるり

「正確に、けれども面白く」をモットーに
アートの世界を紹介するアートライター

目次

ウジェーヌ・ブーダン展の概要

会期2026年4月11日〜6月21日
会場SOMPO美術館(東京・新宿)
最寄駅新宿駅から徒歩5分
休館日月曜日
開館時間10:00〜18:00
※金曜は20:00まで/最終入場は閉館30分前
所要時間1〜2時間ほど
観覧料一般 1,800円(当日2,000円)
25歳以下 1,100円(当日1,200円)/高校生以下無料
※最新情報は公式HPをチェックしてください

日本では知名度が高くないブーダンですが、弟子にあたるクロード・モネの世界的人気が絶大なため、昨今ブーダンの名前も少しずつ認知され始めている印象です。

まさに印象派のように筆の跡がのこるサッサッと描くタッチ、刻一刻と変わる景色をとどめるために必要だったそのスタイルはモネへと継承されていきます。

現代に生きる人からすると、そんな”モネのような”海や空の風景は印象派好きには刺さりやすいはず。私が訪れたのは休日だったのもありますが、かなり混んでいました。

ウジェーヌ・ブーダン展-瞬間の美学、光の探求の様子

会場は3階層に分かれていて、「海」→「空」→「人・動物」といった流れで展示されています。SOMPO美術館さんがブーダンの歴史上の立ち位置やモネとの関係性など非常にわかりやすく解説してくれています。

残念ながら写真撮影は最初の「海」のフロアのみとなっていました。そのため、展示の目玉になっている代表作「干潮」は撮影不可でした。

『干潮』ウジェーヌ・ブーダン ⓒSOMPO美術館

しかし、ブーダンの作品はフランスの各美術館に散っているため、パリへ旅行に行ってもこれだけ一挙に見る機会はなかなかないはず。30年ぶりとなる回顧展はわざわざ足を運ぶべきだと感じました。

若きモネの師匠ウジェーヌ・ブーダン

ウジェーヌ・ブーダン(1824~1898年)はフランス出身の外交派と呼ばれる戸外での制作をいち早くおこなった画家のひとりで、ウィリアム・ターナー同様に「印象派の先駆け」と呼ばれています。

生まれ育ったノルマンディーの光と海、そして絶え間なくうつろう空模様を描き続け、その光と大気の表情をとらえた作風は若きモネへ、そして印象派へと受け継がれていきます。

しかし、作風以上にモネへ影響を与えたのは「戸外」へ出て、光の下で絵を描くという行為でした。16歳の若きモネは風刺画など漫画的な作風を好んでいて、風景画は小遣い稼ぎでした。

しかし、当時32歳のブーダンは一目でモネの才能に気づき、彼を粘り強く戸外制作へ誘い出します。その結果、徐々にブーダンの作風に影響を受け、誇張や歪曲というスタイルを捨て、うつろいゆく一瞬を捉える眼を養っていくのでした。

ブーダンの描いたモネ(右から2番目)

モネは生涯にわたりブーダンへの敬意を持ち、このように回想しています。

もし自分が画家になったとすれば、それはブーダンのおかげである――クロード・モネ

展示されていたブーダンの作品群

3フロアある中で撮影可能であったのは「海」のエリアのみとなるので一部ですが、作品を紹介します。

海景

1883年

少し荒れ始めたような水平線が空と海を分かち、大小の船が大海原へと向かっていく様が描かれています。これらル・アーヴルを題材にした大型作品によって、ブーダンは1880年第以降、海景画家として名声を築いていきました。

これは別の作品ですが、接写してみると波飛沫が白の厚塗りで表現されていて、波の躍動感を非常に感じました。

ボルドーの港、バカラン埠頭からの眺め

1870年代にブーダンが訪れたフランスの南西にあるボルドー。

反戦や蒸気船が並ぶ姿を見ると、この頃の船の技術力や商業化社会を感じますね。題材は地味な風景に見えますが、右下に濃い緑、右中央から広がる夕暮れの淡いオレンジ、そして空と海の青と、3つのメインカラーがあることで、色のバランスが整っています。

ベルク、海岸

こちらは海のエリアは狭く、メインは空と草原です。

スルーされがちな印象でしたが、私はこの作品が結構好きでした。ぜひアップで見てみてください。草原に風がサアッーっとそよいでいく様子が見てとれて、とても心地よいです。

大都会・新宿にいるのに1800年代のフランスの風を浴びられます。

埠頭の帆船

こちらは帆船大好き・ブーダンらしい作品。

この当時はまだ写実的に描きこむ画家も多い時代ですが、印象派のような筆触で、筆の跡がわかりますよね。特に海の描き方は印象派と同じと言っていいくらいで、印象派の作品と言われても気づきません。

このように、風景画家としてブーダンは独自の技法を身に着け、時代を先取りした画家でした。

なお、SOMPO美術館はゴッホの『ひまわり』を常設しているので、こちらも観られるのが売りです。

印象派へと続く道がそこにあった

日本でも印象派が大人気で毎年多くの展示会が開催されています。

しかし、印象派に至るまでの短くも非常に重要な人物が歴史には隠れています。モネがいない印象派の展示会なんて想像できないですよね。

そのモネを導いたブーダンの先進的で確かな技術、だけれどやさしく穏やかな作風を楽しめる展示会でした。

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