こんにちは、ライターのmizuhoです。
私のお気に入り映画「ヴァージンスーサイズ」。
ソフィア・コッポラ監督が、激重テーマを甘く愛おしい世界観でラッピングし、ご提供している映画です。
当記事は原作小説も読んだ筆者のネタバレありの感想・考察レビューとなります。映画だけではよくわからない部分もお伝えできたらいいな、という思いを込めて書いております。

ティーンエイジャーの頃の感覚を、大人になっても忘れたくない。最後にMBTIの考察もしてみた。
★★★★★:大好き、一生覚えてる
★★★★☆:好き、人にすすめたいくらい
★★★☆☆:まあまあよかった
★★☆☆☆:あんまり好みじゃないかも
★☆☆☆☆:観なくてもよかったかも
映画「ヴァージン・スーサイズ」の概要

監督・脚本 | ソフィア・コッポラ |
原作 | ジェフリー・ユージェニデス |
主演 | キルステン・ダンスト (ラックス) ジェームズ・ウッズ (父親) キャスリーン・ターナー (母親)など |
ジャンル | ドラマ |
制作国 | アメリカ |
上映年 | 2000年 |
上映時間 | 98分 |
配信先VODサービス | U-NEXT / Hulu / ※Netflix、Amazonプライムなし |
映画『ヴァージン・スーサイズ』は、1970年代の郊外を舞台に、ある一家の5人の姉妹と彼女たちの周りの人々を描いた物語です。1999年にソフィア・コッポラが監督デビューを果たした作品で、小説「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹 」を原作としています。
原作の著者は男性で、映画も近所の少年たち視点で物語が進んでいきますので男性も見やすい映画かと思います。

映像が美しいだけでなく、70年代の音楽を起用した心地のいいサントラ、カラフルで可愛いインテリアやファッション、そこら辺に散らばる家のテイストと違う小物類、全てが見落とせないポイントです。

映画「ヴァージン・スーサイズ」のあらすじ
美しいリズボン家の5人姉妹。彼女たちの厳格な母親は、この宝たちを世俗から守ろうと必死になっていた。そんなある日、13歳のセシリアが手首を切って自殺を図る。何とか一命を取り止めるが、精神科医は抑圧された生活が自殺の原因だと診断を下し….。《©︎Filmarks》
最初はセシリアだった。(中略)今でも仕事やパーティーで出会うと僕らは彼女たちのことを話す。あの5人のことは僕らの脳裏から離れない。
「ヴァージン・スーザイズ」冒頭より
主人公は、アメリカの郊外に住む厳格なリズボン一家。
数学教師の父、厳格なクリスチャンの母親、美しい5人姉妹(頭脳派でクールなテレーズ(17)、外交的でオシャレが好きなメアリー(16)、内気で信心深いボニー(15)、奔放で色気のあるラックス(14)、不思議ちゃんで思慮深いセシリア(13))の7人家族です。
ストーリーは、末娘セシリアの自殺未遂という衝撃的な事件から始まります。

映画は、近所に住んでいた”男の子たち”が、当時を懐かしむような形で語られていきます。
近所で評判の美しい姉妹は、学校へ行くこと以外、一切の外出禁止されています。ですので、彼女達は彼らにとって不思議な存在。ミステリアスな姉妹に夢中だった彼らは、セシリアの事件を機にほぼストーカー行為で情報収集をします。そして、少しずつ彼女たちを知っていくのです。

鬱々しい内容ではありますが、繊細で神秘的で、愛おしい映画です。
【ネタバレ】「ヴァージン・スーサイズ」悲劇の原因は?
子供を守りたい超絶過保護な母親と、家庭から目を逸らし続ける父親、学校以外の外出禁止を命じられているリズボン家の美しい5人姉妹。
美しい彼女たちが、全員この世からいなくなってしまった原因を、映画と原作から読み解き、お伝えします。
セシリアは2度目の試みで、この世の外に飛び出すことに成功した
原作「ヘビボンドの季節に自殺した五人姉妹」P.42
別に死にたかったわけではなくて、ただ、今の環境から「飛び出したかった」のです。
彼女たちの心に影響を与えていた主な要因は、「家庭環境」で、ティーンエイジャーにとっての世界は、家庭が大半を占めていると言っても過言ではないですから。
末娘セシリアの事件をきっかけに、ギリギリの状態で保たれていた”家族”のバランスが崩れていきました。

セシリアの1回目の自殺未遂で、両親は精神科医に「子供を縛りすぎである」と指摘を受けます。そして、父親が母親に、彼女たちの同年代の子ども達との交流を提案します。母親はその提案に反対しますが、渋々受け入れ、近所の男の子たちを招いてパーティーを開きます。
ですが、そのパーティーの最中にセシリアは2度目のチャレンジを決行します。

セシリアは、姉妹の中で一番思慮深く、感受性が強い少女だったので、絶望への到達が少しだけ早かったのです。
セシリアの死後、新学期が始まり、残された姉妹たちは学校にいきます。
ですが、お色気クイーン4女ラックスがダンスパーティーで事件を起こし母親が大激怒。とうとう学校に行くことも禁止します。

ほぼ監禁状態が続き、彼女たちは鬱になっていきます。一番症状がひどいのは、キッカケを作ってしまったラックスでした。
彼女は、母親に罰として宝物のレコードを暖炉で燃やされました。心が壊れてしまった彼女は性行為で自分を傷つけまくります。ラックスの崩壊は映画でも原作でも酷く描写されており、心がえぐられます。
”自由”をすべて奪われてしまった彼女たちが導いた答えが、セシリアと同様に世界を飛び出すことでした。

物語は“彼ら”のナレーションで綴られていることをお忘れなくです。
彼女たちはもう“女”で、愛や死を理解していたのに、僕らは騒々しいだけの子供だった
映画「ヴァージン・スーサイズ」
彼らは、盗んだセシリアの日記を見てリズボン家を知っていきます。
その後、閉じ込められた彼女たち生活を望遠鏡で覗いたり、両親不在の時に電話をして彼女たちにレコードを聴かせたりして、少しでも救おうとするのです。

その努力は叶わず、彼らは全員の死に直面することになります。
映画は原作とさほど差異はなく、“彼ら”のリズボン家の姉妹たちに対する勝手な妄想と、実際に起きていることが混在している具合が神秘的な雰囲気を醸し出しています。
【ネタバレ】「ヴァージン・スーサイズ」死因は何か?
映画、原作ともに焦点を当てられているのは4女ラックスですが、5人姉妹の死因について紹介します。
まず、セシリアの1回目のチャレンジは浴室内で手首を切ることでした。そして、見事正解した2度目は、パーティーの最中に2階から飛び降ります。セシリアにとっては運が良く、家のフェンスに串刺しになります。

その後、紆余曲折あり、残された姉妹達が一気に挑戦を試みるのです。

左側から、ラックスは車中で発見されます(原作から読み解くとガス自殺で顔面が焼けていた)。テレーズは睡眠薬の過剰摂取、メアリーはオーブンに頭を突っ込み、ボニーは首を吊ります。
映画でもなんとなくわかるのですが、メアリーの挑戦は失敗します。原作では、その後に睡眠薬の過剰摂取で2度目のチャレンジを試み、彼女も無事に世界から脱出します。
【もっと詳しく】姉妹が完全に閉じ込められた理由は?
4姉妹は、学校のプロム(ダンスパーティー)に行くことになります。
ラックスを狙っている男の子が、彼ら(ナレーションをしている少年達)を誘い、4対4で行きます。学校の数学教師である父親が、母親を説得したためプロムに参加できました。
ただ、ラックスが門限を破ります。元々異性間交流に厳しくパーティーなんて行かせたくなかったお母さんは大激怒です。連帯責任で全員セットで閉じ込めてしまいます。
【もっと詳しく】姉妹のドレスが地味な理由は?
1970年代のプロムといえば絶世期で参加するティーンたちは大人顔負けのセクシーなドレスを着たりする子もいる中で、彼女達のブライズメイドかと思ってしまう衣装は母親の手作りです。
体のラインは出さないように大きめに縫い、裾は長く、胸元はきちんとカバーです。
【もっと詳しく】ラックスの心の崩壊が激しかった理由はメンヘラ故?
プロムに一緒に行った男の子が発端です。簡潔に言うとやり捨てされました。

大人になった彼へのインタビューシーンもあるのですが、要約すると「可愛いから好きだったけど、メンヘラだったからその瞬間すごく嫌になった」と言っています。
閉じ込められてからも、異性を家に誘い込み、行為をしまくります。場所は屋根の上です。そして相手は、不特定多数で、配達員とか近所の人など。
彼女は特に異性からの愛に夢と希望を抱いていたのです。ラックスは好きな人の名前を自らの下着に書き、母親にバレて怒られたという描写があります。

彼女は、「いつか王子様が私を救ってくれる」という期待を抱いていたんだと思います。両親からの愛情不足故、異性に依存してしまったのだなと合致が行きます。

そういった感じで、全員が脱出成功、と言うわけです。
最後に ーとにかくカワイイので見て欲しいー
彼女たちは僕たちの人生を通り抜けていった。
ただ、彼女たちが誰だったのか、僕たちは知ることができなかった。
© 映画「ヴァージン・スーサイズ」
記事にしていて思いましたが、私も”彼ら”と一緒で、ミステリアスな彼女たちが気になって、調べてしまった人でした。
テーマは重いですが、とりあえず映像はとても美しいので、眺めているだけだと気分がよくなれる映画です。

季節の変化や、ぼんやりした雰囲気を表現する場面でフレア現象を用いたり、可愛いインテリアやファッション、エモくて儚い天使ような少女たち。

70年代のアメリカの時代背景・親子関係の普遍的な問題という、現実的で重いテーマを、夢みたいに美しい描写で表現してくれたソフィア・コッポラさん、本当にすごいです。
医師「なぜこんな真似を?人生の辛さも知らない若さで。」
セシリア「先生は、13歳の女の子じゃないもの」
映画「ヴァージン・スーサイズ」

この映画は見るたびに視点や感じ方が変わっていきます。
最初に見た時のセシリアのこの言葉に共感していたのに、この間見たら、すごく胸に突き刺さりました。私は、見える世界の大小は、重ねた経験で変わるということを忘れていたのです。
年を重ねるにつれて薄れていく昔の感情を絶対に忘れたくないと思います。

ところで、リズボン姉妹のMBTIは、厳格で賢いテレーズ:INTJ、社交的な場も楽しめるメアリー:ENFJ、伝統も大事にする優しいボニー:ISFJ、自由奔放なラックス:ESFP、繊細なセシリア:INFP でどうでしょう?

